[III-OR38-05] Fontan術後患者のトロンボモジュリンからみた凝固線溶系
キーワード:フォンタン, トロンボモジュリン, 凝固線溶系
【背景】Fontan術(F術)患者では、フィブリンを向凝固から抗凝固に変換するトロンボモジュリン(TM)が低下していると報告してきたが明確な結論はいまだ示されていない。また人の組織におけるTMの抗原量は、胎盤、脾臓、膵臓、肝臓、心臓、腎臓の順で、脾臓のない無脾症候群のTM値に関する報告もない。【対象・方法】対象はF術後より10年以上TM値を測定できた101例。無脾症候群(M群)20例(男/女:8/12)と無脾症候群以外(非M群)81例(男/女:50/31、左心低形成症候(HLHS)3例、三尖弁閉鎖13例、肺動脈閉鎖兼正常心室中隔10例、単心室55例)に分け、術後1年ごとの値を後方視的に検討した。【結果】結果はM群/非M群、mean+-SDで示す。F術時年齢:5.8+-3.9/4.8+-3.6(才)、F術後1年時BNP:23.7+-21.6/20.9+-33.7(pg/ml)で、以下カテーテル検査結果はF術後半年の結果を示す。中心静脈圧:10.5+-3.0/9.8+-2.9(mmHg)、心係数:3.4+-0.7/3.5+-0.7(l/ min / m2)、肺動脈係数:260.0+-76.2/231.2+-62.7(mm2/m2)、肺血管抵抗:1.4+-0.6/1.4+-0.7(U/m2)、動脈血酸素飽和度(SaO2):94.9+-1.2/93.6+-3.3(%)(p=0.0413)、TM値;F術後1年目:2.2+-0.8/2.6+-0.8(FU/ml)、F術後4年:2.0+-0.4/2.3+-0.6(FU/ml)、術後10年:2.0+-0.3/2.3+-0.3(FU/ml) 、術後10年:2.0+-0.6/2.2+-0.6(FU/ml)であった。SaO2以外のカテーテル検査結果、BNPに有意差はなく、TM値は、F術後4年目以降はすべてM群が有意に低値であった。またF術後のTM値の推移をF術後1年目の値と比較すると、非M群では10年目以降、M群ではF術後4年目と6年目以降は有意に低値であった。【考察】F術後症例のTM値はF術後4年目以降有意に低下し、無脾症候群ではさらに低値であった。TMは慢性的な中心静脈上昇による血管内皮細胞障害により経年的に低下し、特に無脾症候群ではさらにTMが低値となり、より慎重な抗凝固療法が必要な状態になると考えられた。