[III-OR39-02] 先天性無脾症候群における感染対策の必要性と課題
キーワード:無脾症候群, 感染管理, 肺炎球菌
【背景】無脾症候群において、莢膜細菌による感染は、重症化しやすく時に致死的である。海外では、23価肺炎球菌ワクチンや髄膜炎菌ワクチン、抗菌薬の予防内服が推奨され、加えて、発熱後2時間以内の医療機関の受診および静注抗菌薬の投与が勧められている。本邦には、具体的な指針が存在せず、感染対策は、各主治医や医療機関の判断に委ねているのが現状である。【目的】先天性無脾症候群における感染対策の課題を明らかにする。【方法】2010年以降、鹿児島大学病院、鹿児島生協病院、鹿児島医療センターで診療した先天性無脾症候群を対象に、ICU管理または心肺蘇生を要する重症感染症に罹患した症例(死亡例を含む)を抽出し、検討した。【結果】対象症例21例。非心疾患患者1例、他20例はFontan手術(候補・後)患者だった。全例で抗菌薬は予防投与されていなかった。死亡は6例で、死因は、感染症3例、手術・検査後の循環不全が3例であった。重症感染症罹患例は、生存例2例を加え、計5例であった。発症時年齢は、生後5か月~9歳10か月。5例中4例の起炎菌は肺炎球菌であり、うち3例で血清型を特定できた(6C、15A、22F)。いずれも13価肺炎球菌ワクチンの予防対象外であり、6Cと15Aは23価肺炎球菌ワクチンでも予防できない血清型であった。発熱してから医療機関に初回受診した時間および抗菌薬初回静注までの時間は、それぞれ中央値で4時間30分、17時間30分であった。生存例2例は、意識障害を呈する前に抗菌薬を内服していた。【結語】無脾症候群における重症感染症は、幅広い年齢に発症し、半数以上が死亡していた。主に肺炎球菌によるものであり、予防接種では防ぎえない血清型も認めた。また、発熱から医療機関への受診、静注抗菌薬の投与は、海外での推奨に比べ、著しく遅い傾向にあった。無脾症候群に対する感染管理について具体的な指針を定め、医療者および患者家族への周知徹底が必要である。