[III-OR39-03] 先天性心疾患術後患者における幼児期の慢性腎臓病合併に関する検討
キーワード:CKD, 術後, 幼児期
【背景】先天性心疾患術後慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)は、高血圧、蛋白尿のみならず成長、発達障害、腎性貧血、骨ミネラル代謝異常など小児特有の問題を伴う重要な病態であり、その早期発見・治療は意義が高い。【目的】心臓手術後2年以上経過した患者における幼児期CKDの頻度と危険因子について検討する。【方法】CKDの診断は小児CKDのステージ分類を用いた。患者背景、周術期急性腎障害(Acute Kidney Disease:AKI)、チアノーゼ性心疾患・Fontan循環、内服薬およびCKD合併症について比較検討した。手術難易度はRACHS-1スコアを用いた。早産・低出生体重児、先天性の腎尿路器系異常や染色体・遺伝子異常症例は除外した。【結果】対象は147例。幼児期CKDは22例(15.0%)、平均eGFR 82.5 mL/min/1.73 m2で全例CKDステージ2であった。CKD群はnon-CKD群と比較し、有意にRACHS-1スコアが高く(P=0.005)、チアノーゼ性心疾患・Fontan循環(各P=0.009、P<0.001)症例が多かった。CKD発症に周術期AKIとの関連性はなく、Fontan循環(OR 20.8、P<0.001)とRACHS-1スコア高値(OR 1.7、P=0.041)がCKDのリスク因子であった。幼児期CKD群で高血圧、尿蛋白陽性を満たしたのはそれぞれ1例であった。【考察】Fontan循環や手術難易度の高い患者では、幼児期早期にCKDの定義を満たす患者が多く、心拍出量の低下、長期の低酸素や慢性的な静脈うっ滞、心臓侵襲に伴う腎毒性などが原因になり得ると考えられた。【結論】Fontan循環や手術難易度の高い患者では、術後も縦断的に腎機能の評価を継続しつつ重篤な合併症に留意していく必要がある。