[III-OR39-04] クリップによるシャント血流制限を行ったBTシャント術症例の予後の検討
キーワード:BTシャント, クリップ, シャント開存期間
【背景】BTシャント(BTS)は新生児のチアノーゼ性先天性心疾患の治療において重要な姑息術であるが、術後の死亡率は依然として高い。シャント径が大きく肺血流が過剰な場合は体血流減少によるショックが、シャント径が小さい場合にはシャント内血栓や酸素化不良が問題となる。シャント血流制御のためにヘモクリップを用いることがあるが、予後を検討した報告は少ない。今回我々はクリップによる血流制限を行った症例の予後を検討したので報告する。【方法】2008年1月から2018年9月までの期間に当院でBTS術を受けた、手術時体重4kg未満の症例を後方視的に検討した。【結果】全78例中、シャント血流制限を目的にクリップを使用した症例は7例であった。クリップ使用理由は、術中の血流調整が6例、術後の高肺血流で緊急処置を要した例が1例であった。観察期間はBTS術から死亡または次回予定手術(心内修復術やGlenn手術など)までとした。死亡は1例で、術後40日に突然の徐脈を機に心肺停止となり、蘇生に反応せず死亡した。シャント閉塞は1例で、閉塞までの期間は8日であった。シャントへの介入は4例で認められ、外科的クリップ除去1例、バルーン拡張によるクリップ除去2例(うち1例は後に再度バルーン拡張施行)と、肺動脈狭窄に対する形成術後に高肺血流となりクリップを追加した例が1例であった。シャントの有効開存期間を造設から閉塞、シャントへの初回介入、またはSpO2<75%(室内気)までとした場合の50%開存期間は、背景疾患(単心室or二心室、順行性肺血流の有無)・BTS術時の体重・シャント径・手術時期をマッチさせたコントロール群(14例)と比べて短い傾向にあった(71日 vs 189日, p=0.3)。【考察/結論】シャントに対するクリップ使用は、急性期の血流制限の方法として有効な手段であるが、クリップ留置後のシャント開存期間は中央値で71日と短く、次の介入を予期した経過観察が必要である。