[III-P76-03] 染色体マイクロアレイ解析により診断した大動脈二尖弁、大動脈縮窄症、心室中隔欠損を伴う1q31.1-32.1欠失の一例
Keywords:染色体異常, マイクロアレイ, 先天性心疾患
【背景】染色体マイクロアレイ解析(以下CMA)は、Gバンド染色体検査より微細な異常領域の同定に有用である。今回、我々は先天性心疾患を伴う症例にCMAを用いて稀な染色体欠失と診断した。【症例】在胎38週、出生体重1888g、自然分娩にて出生。心エコーで先天性心疾患を指摘され当院へ紹介搬送となった。身長-2.7SD(asymmetrical small for gestational age)と小柄で、身体所見では特徴的な顔貌(上向きの毛髪、眼瞼裂斜下、広く高い鼻梁など)、筋緊張低下、手関節の屈曲位拘縮、第12肋骨欠損を認めた。大動脈弁は二尖弁であり、遠位大動脈から峡部にかけての大動脈縮窄と、流出路から膜様部にかけて6mm大の心室中隔欠損を認めた。低体重児であることから、日齢6に両側肺動脈絞扼術を施行した。経過中、高インスリン性低血糖、一過性甲状腺機能低下を認めた。Gバンド染色体検査の結果は46XY,del(1)(q31q32.1)であったが、同領域を含む欠失例の既報と、本症例の臨床症状は一致しなかった。より詳細な欠失部の同定のためCMAを行い1q31.1-32.1欠失と診断した。本症例の欠失領域には、肥大型心筋症や副甲状腺機能亢進症、黒内障の関連遺伝子(TNNT2、CDC73、CRB1)が含まれ、本症例でも発症の可能性が示唆された。また、同領域の欠失に心疾患を伴った報告は確認できず、初の報告と思われた。その後、日齢65に拡大大動脈弓吻合術、主肺動脈絞扼術を施行し退院した。【考察】先天性心疾患を伴う1q31.1-32.1欠失を経験した。欠失領域にはトロポニンT遺伝子であるTNNT2など、複数の遺伝子が含まれている。一方で同部を含む欠失例の報告は稀であり、人における先天性心疾患との関連を示した報告は少ない。症例の積み重ねが重要と思われる。