[III-P77-02] 大動脈閉鎖を伴う完全大血管転位症 -胎児循環と出生後経過からの考察-
キーワード:HLHS with TGA, 大動脈弁閉鎖, 肺動脈弁異形成
【背景】大動脈弁閉鎖(AA)を伴う完全大血管転位症(TGA)は生存出生が困難なため、極めて稀な先天性心疾患である。正常大血管関係の広義のHLHSと異なり、前方大動脈起始によって低形成上行大動脈は細長く伸展され、胎児期から既に冠血流は不良である。一方、Tausig-Bing型両大血管右室起始と異なり僧帽弁-半月弁間に連続性を伴うため、前方に低形成大動脈の存在を想定しにくく出生前診断を難しくする。【症例】在胎25週に胎児心エコー外来初診。心房位正位、心房心室関係は正常関係で、僧帽弁と繊維性連続を持つ太い一本の大血管が小さい心室中隔欠損症に騎乗していた。三尖弁および右心室がやや小さめで、半月弁はdomingし、高度狭窄後拡張を認め、背面から左右肺動脈を分岐した。腕頭動脈と右内頸動脈が大動脈弓から一緒に分岐する大動脈形態を持ち、三尖弁軽度狭窄を伴う総動脈幹症 (TAC A2)と診断した。心拡大や収縮不全は認めなかった。38週3178gで出生し、Apgar5/6。生後に左室収縮低下と心筋非白化を認め、三尖弁膜様閉鎖/狭窄に伴う左室心筋異常を疑った。左室収縮低下に対して日齢6に両側肺動脈絞扼術(Bil PAB)を施行したが、術中所見で右室近傍の索状物と左冠動脈の連続性が疑われた。超音波検査により前方大血管として1mm程度の上行大動脈が存在する可能性を考慮し、逆行性橈骨動脈造影を施行、AA with TGA, TS, VSDと診断を確定した。長い上行大動脈と大動脈弓に屈曲を伴う高度狭窄を認め、また出生時より認めた頻脈時ST低下はBil PAB後も改善しないため、心筋虚血に対して日齢15にNorwood手術(Rt-mBTS 4mm)を施行した。術後心電図変化は消失し、左室収縮にも著明な改善が得られた。【考察】本疾患は稀ではあるが単一大血管疾患の鑑別のうち最重症疾患であり、BTシャントを用いた新生児Norwood手術が可能な3次医療施設での周産期管理により救命が可能となる。