[III-P78-02] 肺静脈狭窄を繰り返し、病理所見で肺静脈壁の弾性繊維および平滑筋の消失を認めた右肺欠損・総肺静脈還流異常の1例
Keywords:肺静脈狭窄, 病理, 総肺静脈還流異常
【背景】総肺静脈還流異常症(TAPVC)術後に肺静脈狭窄(PVO)を繰り返す例があるがその原因は未だはっきりしていない。【症例】在胎33週5日常位胎盤早期剥離のため緊急帝王切開で出生(Apgar1-3-5 出生体重 1501g(-1.8SD))。生後チアノーゼ、PHを認め、精査の結果右肺欠損、TAPVC(1+2)と診断した。体重増加を待ってから日齢81 左下肺静脈修復術(CS cutback)、心房中隔欠損閉鎖術を施行。術後経過良好で日齢112退院。しかし約1か月後に左下肺静脈の再狭窄を認め生後5か月時に狭窄解除術(sutureless repair)を行った。術後は症状の改善を認めたが、その後もPVOを繰り返し、生後6ヶ月に狭窄解除術、7ヶ月時には狭窄解除+左上肺静脈のreroutingを行った。生後9か月時再度PVOの進行を認め呼吸循環不全のため永眠された。死後Ai、病理解剖を施行。Aiでは右肺無形性、左肺静脈心房流入部の狭窄に伴う左肺の間質性肺水腫を認めた。病理所見では左下肺静脈の器質的な狭窄は見られず、狭窄部の肺静脈壁の弾性線維および平滑筋の消失を認めた。【考察】TAPVC術後PVOの原因として肺静脈の内膜肥厚が原因とする報告もあるが、本症例においては狭窄部における内膜肥厚は認めず、弾性線維および平滑筋の消失を認めた。本症例においては右肺欠損にともなう血流の増加と弾性線維・平滑筋の消失に伴う機能的狭窄が肺静脈狭窄を繰り返した原因と考えられた。