[III-P79-03] 低年齢の児に対する橈骨動脈穿刺による選択的冠動脈造影
キーワード:橈骨動脈穿刺, 冠動脈造影, 川崎病
【背景】橈骨動脈穿刺(transradial access:TRA)によるカテーテル手技は、穿刺時の出血性合併症や神経損傷の少なさ、患者の安静保持が緩和されるなどの利点から、成人領域を中心に急速に普及してきた。一方で、動脈径が小さかったり筋性動脈であるためにスパズムが生じやすいなどの理由から穿刺がやや困難であり、低年齢の児に対しては一般的でない。当院では、経大腿動脈冠動脈造影の際に仮性動脈瘤を形成し外科治療を要した症例を経験したことがあり、それ以降は低年齢でもTRAを選択することがある。そこで、当院で経験した低年齢の児に対するTRAについて検討した。【方法・結果】2014年1月から2018年10月までの間(4年10ヶ月)に当科で冠動脈造影を施行した64症例のうち、大腿動脈穿刺46症例及び上腕動脈穿刺1症例を除いた17症例がTRAであった。そのうち10歳以下の低年齢の児は5症例であった。内訳は、川崎病冠動脈瘤4症例と冠動脈瘻1症例であった。十分な静脈麻酔(鎮静・鎮痛)で児の緊張緩和や血管スパズムの予防に務め、超音波ガイド下で穿刺を行い3-4Frシースを挿入した。全例TRバンド(橈骨動脈用止血器)で止血を行い、橈骨動脈シース抜去に伴うカテ後のベッド上安静は不要であった。5症例の年齢は6-10歳(中央値7歳)、体重は17.2-39.7kg(中央値25.2kg)、穿刺開始からシース挿入(動脈・静脈)までの時間は16-21分(中央値16分)、透視時間は14.4-26.9分(中央値19.6分)であった。いずれも良好な造影像が得られ、合併症は認めなかった。低年齢の大腿動脈穿刺15症例と比較し、穿刺時間や透視時間、合併症に有意差はなかった。【結語】小児患者におけるTRAは、やや術者の慣れを要するが患者の負担を軽減できるアプローチであり、症例は少ないものの低年齢の児に対しても安全に施行できる。