[III-P80-04] 学校心臓検診で発見された進行性心臓伝導障害の一例
Keywords:学校検診, 伝導障害, SCN5A
進行性心臓伝導障害(PCCD)は基礎疾患のない若年者にみられる進行性の伝導障害であり、SCN5A遺伝子やLMNA遺伝子変異などの関与が報告されている。今回学校検診を契機に発見されたPCCD症例を経験し、症例を発端者として祖父、母にSCN5A遺伝子変異が特定された。本邦においても家族性PCCDの報告は散見されており、疾患の予後・突然死のリスクなどを考慮すると房室伝導障害や若年時のPM挿入例の家族歴聴取は重要である。症例は生来健康な児、母は膠原病の既往なし。小学校入学まで易疲労感、痙攣・失神の既往なく過ごしていた。小学校入学時の学校心臓検診で心電図上PR時間0.22秒と延長し、左軸偏位を伴う完全右脚ブロック(QRS時間0.139秒)を認めた。その後2次検診で定期的にフォローされ、小学校4年次の検診時に心電図でQRS時間0.164秒と増悪し、房室解離を認めたため当科外来へ紹介された。受診時の問診で祖父が学童期に失神発作を繰り返し、徐脈のため23歳時にペースメーカーを埋め込まれていたこと、母が一過性脳虚血発作を起こし体内心電図を埋め込まれていたことが判明した。本症例は無症候性だったが心電図で徐脈、補充調律を認め、レントゲン上CTR 56%と拡大しBNP 62.3pg/mlと上昇していた。ペースメーカー適応の可能性を考慮し、利尿剤、シロスタゾール内服で所見が一時的に改善したため現在慎重に外来観察を継続している。後日、祖父・母、本人にSCN5Aミスセンス変異:p.Y168D(c.T502G)が判明し、PCCDと診断した。症例は無症候性であったが、年次ごとに心電図所見は悪化していたため治療介入しなければ失神発作を起こしていた可能性が高いと考える。学校検診によりAdams-Stokes発作を起こす前に検出できたと考える。一方で問診票では祖父の病歴を検出することはできていないため、本疾患群を検出するために若年時のペースメーカー治療の有無について評価することが必要かもしれない。