第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

電気生理学・不整脈

ポスターセッション81(III-P81)
電気生理学・不整脈 8

2019年6月29日(土) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (大ホールB)

座長:後藤 浩子(岐阜県総合医療センター 小児循環器内科)

[III-P81-01] CACNA1C変異が同定されたが,Timothy症候群の心外症状を伴わないQT延長症候群8型の一例

島田 空知1, 梶濱 あや1, 中右 弘一1, 東 寛1, 大野 聖子2 (1.旭川医科大学 小児科学講座, 2.国立循環器病研究センター 分子生物学部)

キーワード:QT延長症候群, QT延長症候群8型, CACNA1C変異

【背景】QT延長症候群8型(LQT8)は,QT延長症候群(LQTS)のうちCACNA1C変異を有するものを指し,通常は合指症,顔貌異常,精神神経疾患等を併せ持つTimothy症候群として知られている。しかし近年になり,網羅的遺伝子解析によりTimothy症候群の心外症状を伴わないCACNA1C変異を有するLQT8患者が存在することが分かってきた。今回我々は,学校心電図検診を契機にLQTSと診断し,網羅的遺伝子解析にてCACNA1C変異を認めたLQT8の1例を経験したので報告する。
【症例】14歳男子。既往歴および家族歴に特記すべき事なし。学校検診で脈不整を契機に気付かれた。心電図でQTc 0.51と延長し、late onset T waveを呈していた。ホルター心電図では、Torsade de Pointes様の非持続性心室頻拍(NSVT)が補足された。本人及び家族の遺伝子検査を施行したところ、CACNA1Cのヘテロ接合性変異(c.2573G>A, p.R858H)を本人のみに認めた。β遮断薬内服によりホルター心電図上でNSVTは消失・PVCは激減し,現在も致死的不整脈イベントなく経過している。
【考察】一般的にTimothy症候群は,治療抵抗性の心室性不整脈により平均生存期間は2.5歳と予後不良である。一方でQT延長のみを呈するCACNA1C変異の頻度・治療法・予後等は明らかにされていない。本症例において、β遮断薬は心室性不整脈の発現抑止に効果的であり,Timothy症候群の心外症状を呈さないLQT8においても、治療薬として考慮される薬剤である。
【結論】CACNA1C変異を有する心外症状伴わないLQT8の1例を経験した。心外症状を伴わないLQT8に関する症例の蓄積が必要である。