第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

成人先天性心疾患

ポスターセッション82(III-P82)
成人先天性心疾患 5

2019年6月29日(土) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (大ホールB)

座長:松尾 浩三(千葉県循環器センター)

[III-P82-04] 未手術で経過した右室性単心室、肺動脈弁狭窄の2成人例

白井 丈晶1, 下浦 広之1, 佐藤 有美2, 金子 明弘1, 阪田 美穂2, 圓尾 文子3 (1.加古川中央市民病院 循環器内科, 2.加古川中央市民病院 小児科, 3.加古川中央市民病院 心臓血管外科)

キーワード:Fontan型手術, 単心室, 自然歴

【背景】Fontan型手術は単心室疾患患者の標準的治療戦略で、外科技術向上や肺血管拡張薬の登場で、以前より適応は拡大している。同時に、遠隔期の問題(肝疾患、PLE、社会心理的問題など)が注目されている。今回我々は、未手術で経過した右室性単心室(以下SRV)、肺動脈弁狭窄(以下PS)の成人2例を経験した。自然歴の単心室患者は現在では貴重であり、拡大傾向にあるFontan手術適応に関して知見を与えるものと考え、文献的考察を加えて報告する。【症例1】40歳男性。SRV、PS、共通房室弁(以下CAVC)と小児期に診断。リスクが高く積極的には外科治療を勧められずに経過。39歳で循環器内科へ管理移管。SpO2 86%程度。BNP 50-100pg/ml、心エコー上、中等度の房室弁逆流を認め、心室収縮能は保たれている。概ね自宅内で生活し、独歩で通院。NYHA2度程度。心不全や不整脈での入院歴なし。【症例2】53歳女性。2歳時に他院にて、SRV、CAVC、PS、総肺静脈還流異常、aspleniaと診断。手術リスク高いため保存的に経過観察の方針となり、20歳代前半からワーファリン内服を開始。45歳頃より息こらえで消失する動悸症状認め、不整脈治療目的に当院紹介となり、抗不整脈薬内服でコントロール可となった。SpO2 80%程度。心エコー上、高度の房室弁逆流を認め、心室収縮能は保たれている。これまで心不全入院はなく、現在NYHA2度程度で経過している。【考察】40歳、50歳のFontan患者の5年生存率はそれぞれ一般人の75歳、82歳に相当すると近年報告されている。経験症例では2例ともチアノーゼによる合併症は有するものの、adaptiveな生活をされている。社会心理的問題や肝疾患、PLEなども認めない。長期予後の点で、バランスのとれた単心室血行動態が必ずしもFontan循環に劣るとは限らず、Fontan適応が境界例の単心室血行動態患者の治療戦略には多角的な視点が必要と考えられた。