[III-P82-06] 絨毛膜下血腫を合併した先天性心疾患患者の妊娠出産
キーワード:絨毛膜下血腫, 先天性心疾患, 妊娠
絨毛膜下血腫を合併した先天性心疾患患者の妊娠出産を3症例経験したので報告する。症例1は6歳時に三尖弁閉鎖に対してフォンタン手術後の妊婦。妊娠9週4日に8cm大の巨大絨毛膜下血腫と性器出血を認め入院となった。低用量アスピリンを服用していたが、出血のため中止された。入院安静とし経過観察したところ、19週6日時点で血腫が4cm大まで縮小した。32週6日に全身麻酔下で帝王切開を施行し、児は1687g、アプガースコア5/5で出生した。症例2は両大血管右室起始症と心室中隔欠損に対してマスタード手術後の女性。妊娠9週6日に絨毛膜下血腫を認め入院した。14週1日に性器出血があったため低用量アスピリンの服用を中止。18週1日に入院後、安静管理下で絨毛膜下血腫は消退し、20週6日に退院した。32週1日、徐脈傾向が強まり、洞不全症候群の診断で一時左心耳ペーシングを実施した。34週2日に選択的帝王切開術を行い、児は1767g、アプガースコア8/9で出生した。症例3は修正大血管転位、心室中隔欠損症、肺動脈弁狭窄症(未手術)の妊婦。妊娠8週6日の経膣エコーで絨毛膜下血腫を認め、安静管理目的に入院した。入院後出血なく血腫は消退し、児の発育は良好で11週0日に退院となったが、浮腫の増悪があり32週1日に再入院。35週1日に帝王切開術を施行し、児は2295g、アプガースコアは9/9と良好であった。術後、母体の胸水貯留と心拡大を認め、術後6日目にはBNPが845pg/mlまで上昇し、ラシックス、アルダクトンを開始した。術後23日目で心不全症状が改善したため退院した。今回の3症例は母体の慢性心不全から胎盤の循環障害があり、絨毛膜下血腫が形成された可能性が考えられた。また抗血小板薬の内服も影響した可能性がある。先天性心疾患の妊娠では絨毛膜下血腫の発生リスクが高い可能性があり、妊娠管理中は注意が必要である。