第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

成人先天性心疾患

ポスターセッション83(III-P83)
成人先天性心疾患 6

2019年6月29日(土) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (大ホールB)

座長:西畠 信(総合病院鹿児島生協病院 小児科)

[III-P83-03] 重症肺高血圧合併心房中隔欠損症に対し、心房中隔欠損症部分閉鎖術およびエポプロステノール持続静注を併用し治療を行った2例の検討

小木曽 正隆1, 杉山 央2, 朝貝 省史2, 小暮 智仁1, 新浪 博士3, 萩原 誠久1 (1.東京女子医科大学 循環器内科, 2.東京女子医科大学 小児循環器科・成人先天性心疾患科, 3.東京女子医科大学 心臓血管外科)

キーワード:心房中隔欠損症, 肺高血圧症, treat and repair

【症例1】17歳女性。10歳時に発熱・呼吸苦を主訴に当院受診。インフルエンザの診断で入院となり、その際に心房中隔欠損症(ASD)の診断に至った。カテーテル検査では平均肺動脈圧(mPAP)は52mmHg、肺体血流比(Qp/Qs)は1.1、肺血管抵抗(Rp)は12.1 wood単位でASD閉鎖は困難と考えられたが、ASD部分閉鎖を先行し術後に肺高血圧(PH)治療を行う方針とし、ASD部分閉鎖を行った。その後、エポプロステノール(EPO)を使用してPHの治療を行い、術後6年経過し、EPO 49 ng/kg/min使用下、mPAP 37、Qp/Qs 1.4、Rp 4.5となっており、残存ASD閉鎖時期を検討している。【症例2】42歳女性。40歳時の健診で心電図等の異常を指摘され当院紹介。精査でASD、PHを認めた。カテーテル検査ではmPAP 56、Rp 12.4でPH合併ASDの診断となった。Qp/Qsは0.8でありASD閉鎖の適応はないと考えられ、PH治療後にASD閉鎖を考慮するtreat and repairを目指すこととしEPOを含む薬物治療を開始した。6か月後(EPO 41 ng/kg/min)には、mPAP 46、PVR 2.4、Qp/Qs 3.1となり、ASD閉鎖試験でも血行動態の改善を認めたためASD部分閉鎖術を行った。術後3か月でmPAP 23、Rp 2.5と改善を認めており、残存ASD閉鎖時期を検討している。【考察】いずれの症例もASD部分閉鎖ならびにEPOを用いてPH治療を行って経過をみている。近年PH合併ASDに対するtreat and repairの有効性が報告されているが、長期成績が不明であり議論の余地のあるところである。今後も注意深い経過観察が必要であるが、ASD部分閉鎖術とエポプロステノールでのPH治療の併用は従来では手術不適応と考えられたPH合併ASDの治療戦略として有用である可能性がある。