[III-P83-04] Uhl病として小児期を経過し、不整脈源性右室心筋症の病相を呈している成人例
Keywords:Uhl病, 不整脈源性右室心筋症, 成人先天性性心疾患
Uhl病の多くは乳幼児期に発症し、その殆どは成人期に達することはないとされている。一方、不整脈源性右室心筋症(以下ARVC)は思春期以降に発症する右室起源の心室不整脈を特徴とする心筋症である。今回、我々は小児期にUhl病として管理され、ARVCの病相を呈した30歳男性の1例を経験したので報告する。【症例】周産期、幼児期に特に異常なく、小学校1年生の学校健診で心電図異常を指摘され、3次医療機関に紹介。心房間右左短絡、正常三尖弁付着部位、著明な右室拡大と収縮低下、心筋生検よりUhl病もしくはARVCの可能性と診断され、運動制限のみで小児科管理を経て、28歳で当院循環器内科へ紹介となった。来院時、SpO2 90%前後、NYHA3度で、MRIにて著明な右室拡大、収縮能低下、心房中隔欠損、右室壁にびまん性のdelayed enhanceを認めた。利尿薬と抗凝固薬を開始し、保存的に経過観察を行うとともに、治療戦略として右心バイパスを検討していたところ、動悸とチアノーゼの増悪を主訴に入院。心室頻拍の診断に至り、アブレーションとICD植込みを施行。薬物療法を併用し、経過観察を行っている。【考察】Uhl病はARVCと同じ疾患の異なる臨床状態を見ているものであり、ARVCの亜系(最重症型)とする考え方がある。本症例は典型的なUhl病としては発症時期が遅く、一部に右室心筋の残存が示唆され、心室頻拍を発症していることから、ARVCとしての臨床像が強い。Uhl病への治療戦略として、右心バイパスの報告が散見される一方、ARVCに対しては、短期的な報告はあるものの長期生存の続報は少なく、スタンダードな治療戦略は、不整脈の管理とされる。今後の厳重な経過観察が必要である。本症例はUhl病とARVCが同一スペクトラムの疾患とする考え方に、多くの示唆を与える貴重な症例と考えられ、文献的考察を加えて報告する。