[III-P83-05] 左上肢急性動脈閉塞を来した川崎病冠動脈外動脈瘤の一例
キーワード:川崎病, 末梢動脈瘤, 上肢急性動脈閉塞
【背景】川崎病(KD)は重症の冠動脈瘤を合併する症例に、末梢動脈瘤(PAA)を形成することが知られているが、PAAの管理や治療ついての報告は少ない。【症例】37歳男性。生後9ヶ月時にKDと診断され、アスピリン内服により加療された。同年に冠動脈瘤、両側腋窩・右鎖骨下動脈瘤の精査のため当院小児科を紹介受診され、定期フォローを行っていた。27歳時のカテーテル検査にて右鎖骨下動脈瘤の閉塞と側副血行路を確認。左腋窩動脈瘤は残存していた。33歳時に左上肢に一過性の冷感・蒼白が出現したが、造影所見は前回と同様であった。2018年XX月に突然、左上肢の疼痛と痺れが出現し、左上肢急性動脈閉塞が疑われ当院へ搬送された。緊急血管造影では左腋窩動脈瘤は開存していたが、上腕動脈遠位部に血栓閉塞を認めた。血管内超音波(IVUS)を施行したところ、器質化血栓による高度狭窄とその近位側に比較的新しい血栓像を認めた。血栓溶解ならびにバルーン拡張術を行い末梢までの血流再開を得た。術後はウロキナーゼ局所動注と抗凝固療法を継続し自覚症状は改善した。1週間後の造影で再狭窄を認めたため、4.0mmのカッティングバルーンにて再拡張を行い、後遺症無く退院した。【考察】今回の造影CTやIVUSで腋窩動脈瘤内に多量の血栓を認めており、以前からの上肢虚血発作は血栓が上腕動脈遠位部に遊離し、一過性の閉塞と再灌流を繰り返して器質化血栓を形成し、最終的に完全閉塞を来したと推測した。バルーン拡張術後の再狭窄に対してはIVUSで器質化血栓内にも血流を認めたため、カッティングバルーンを選択し良好な拡張が得られた。PAAに関する抗凝固療法に一定の見解は無いが、本症例では腋窩動脈瘤内の血栓形成予防目的に抗凝固療法を開始した。【結語】左上肢急性動脈閉塞を来した川崎病冠動脈外動脈瘤の一例を経験した。