[III-P83-06] D型完全大血管転位症・セニング術後に心房頻拍・三尖弁閉鎖不全を合併した体心室右室不全への治療戦略
キーワード:dextro-transposition of the great arteries, atrial switch operation, systemic right ventricle failure
【背景】D型完全大血管転位症(d-TGA)の心房位血流転換術後遠隔期に体心室右室機能低下を来した患者に対する治療戦略は未だ十分に確立されていない。【症例】症例は29歳男性。出生後にd-TGAと診断され4か月時に心房位血流転換手術であるセニング手術を受けた。10歳頃より洞機能低下を指摘された。24歳以降通院を自己中断した。29歳時動悸・息切れを自覚し前医を受診。心拍数130/分の心房頻拍を認め薬物治療が開始された。その3か月後急性心不全で前医へ緊急入院した。強心薬の投与や心房頻拍に対する心拍応答コントロールが図られたが、前ショック状態となり、体外設置型補助循環等の必要性を考慮され、4日後に当院へ転院搬送した。心房頻拍、高度三尖弁逆流(TR)を合併しており、心臓MRIでは右室拡張/収縮末期容積係数(RVEDVI/RVESVI)=185/127cm2、右室駆出(RVEF)=31%と解剖学的右室のリモデリングを認めた。この時点でのTRへの外科的介入は高リスクであり、内科的治療を先行した。ドブタミン併用で心不全治療薬(ACE阻害薬・β遮断薬・利尿剤)をup-titrationし、リズムコントロールのためカテーテルアブレーションを行った。アブレーション治療後は洞調律維持が可能となり、3ヶ月後の評価でRVEDVI/RVESVI=133/182cm2、RVEF=38%へと解剖学的右室の逆リモデリングが確認できた。外科的に三尖弁置換手術と両心室ペースメーカ植込み手術を行い改善が得られた。内科的治療が奏功したため、外科的治療へ到達することができ、体外設置型補助循環や心移植を回避し救命に成功した。【結語】心房位血流転換術後のTRを合併した体心室右室機能低下に対しては、最大限の内科治療を先行させ、反応性が確認された場合にTRへの外科的介入を検討することが可能となる。それには内科・外科協働のハートチームで取り組む体制が重要である。