[III-P84-01] 急性胃腸炎が先行した冠攣縮性狭心症の一小児例
Keywords:冠攣縮性狭心症, 小児虚血性心疾患, 血管内皮機能障害
【背景】冠攣縮性狭心症(Coronary Spastic Angina; CSA)は日本人に多い冠動脈疾患であるが, 小児期発症は極めて稀である. 【症例】10歳男児. 川崎病罹患歴なし. 2日前からの下痢症状があり, 早朝就寝時に突然の胸痛を自覚し前医救急外来を受診した. 前医受診時には胸部症状は消失していたが, 12誘導心電図でST上昇があり, また血液検査でCK 411U/L,CK-MB 36.6ng/mL, Troponin-I 4653.0pg/mLと心筋逸脱酵素上昇を認めたため当院へ救急搬送となった. 第6病日に施行した心臓カテーテル検査では冠動脈形態異常は認めず, アセチルコリン負荷で冠動脈3枝のびまん性狭窄所見を認めた. 24病日に施行した運動負荷心筋シンチグラフィーでは, 虚血性変化を示唆する前壁から心室中隔優位の取り込み低下を認めた. 血管内皮機能検査(Endo-PAT2000)では反応性充血指数(Reactive Hyperemia Index; RHI) 1.17(正常2.0以上)と血管内皮障害異常を認めた. 【考察】小児期発症のCSAは頻度が極めて低いため, 一般的な臨床症状と心電図変化からなる診断基準のみから確定診断とすることは困難である. また本例では胃腸炎症状が先行しており, 急性心筋炎との鑑別も重要であった. カテーテル検査で冠攣縮誘発試験を行うことが確定診断に有用と考えられる. 本疾患の病態生理は未だ不明な点も多いが, 本例ではRHIの低下を認めており, 若年発症のCSAには何らかの全身性血管内皮機能障害が関与している可能性が示唆された.