[III-P85-01] 左心室に流入する無冠尖のバルサルバ洞動脈瘤破裂の1例
Keywords:バルサルバ洞動脈瘤, 大動脈弁閉鎖不全, 無冠尖
【背景】バルサルバ洞動脈瘤の発症頻度は先天性心疾患手術症例中0.6%と非常に稀な疾患であり、胎生期の癒合不全により脆弱となったバルサルバ洞の動脈壁が瘤化および破裂を起こすとされている。発生部位は割合として右冠尖が最も多く(79%),無冠尖は19.5%と報告されている。バルサルバ洞動脈瘤破裂はバルサルバ洞から流入する部位により分類され,右室流入型が69.1%と最も多く,右房流入型は27.3%と報告されており、左室流入するものは、非常にまれである。今回、無冠尖のバルサルバ動脈瘤が左心室へと破裂したことにより、重度の大動脈弁閉鎖不全(AR)を呈した症例を経験したので報告する。【症例】生後7か月時に感冒で近医受診した際に、心雑音を初めて指摘。当科紹介・精査にて重度のAR、僧帽弁閉鎖不全(MR)の診断。利尿剤、ACE阻害薬で管理開始。MRは改善したものの、ARは残存し、4歳頃より、労作時の息切れや易疲労感が出現。6歳時に手術前精査として、心臓カテーテル検査、経食道心エコー検査施行目的に入院。この入院時の経胸壁心エコー検査にてARが弁尖でない部分から生じていることが判明し、経食道心エコー検査にて無冠尖のバルサルバ洞動脈瘤破裂と診断。術中所見:無冠尖のバルサルバ洞は拡大し、大動脈弁-僧帽弁のfibrous continuityがあるはずの部分で左室側に落ち込んで、その部分に8mm大の穿孔を認めた。手術にて穿孔部分は直接閉鎖された。【考察】これまでの報告で、無冠尖のバルサルバ洞動脈瘤破裂が左室に流入するものは、見つけうる限り1例のみであった。本症例は、バルサルバ洞動脈瘤破裂において非常に珍しい病型であるが、初診時から鑑別診断には上げなければならない病気であった。【結語】バルサルバ洞の拡大とJet血流を認めた場合、バルサルバ洞動脈瘤破裂は鑑別しなければならない病気である。