[III-P86-01] 経時的にFFR値が改善し治療介入に躊躇している川崎病性巨大冠動脈瘤無症候性閉塞および局所性狭窄合併の1例
キーワード:川崎病性冠動脈瘤, 局所性狭窄, FFR
【緒言】成人領域において冠動脈狭窄による慢性虚血性心疾患の治療適応判断に冠血流予備量比(FFR)が汎用されている。今回、遠隔期左前下行枝無症候性閉塞・右冠動脈局所性狭窄(LS)に対する評価として測定したFFR値が狭窄率と相反する形で経時的に改善を示している川崎病性冠動脈瘤の1例について報告する。【症例】9歳男児。1歳10か月時に川崎病を発症し、9病日までに計2回の免疫グロブリン大量療法 (IVIG)、ステロイドパルス療法を行ったが沈静には至らず冠動脈が拡大した。Infliximab・3rd IVIG・cyclosporin Aの追加で21病日に漸く寛解し、発症から2か月後に実施した初回冠動脈造影検査 (CAG)で、右冠動脈: Seg1 5.7mm、左冠動脈: Seg6-7 10.8mm・Seg11 5.2mmと両側冠動脈病変を認め、ワルファリン (目標PT-INR 2.0-2.5)、アスピリン併用による管理を継続した。8歳時に実施した3回目のCAGで左前下行枝巨大瘤の無症候性完全閉塞が確認され、閉塞部位以降の左前下行枝末梢へは左回旋枝、対角枝および右冠動脈から側副血行路が形成され血流が維持されていた。また、 Seg1瘤遠位部にLS (狭窄率34%) が明らかとなったが、測定したFFR値は0.80という結果であり、虚血所見に乏しい点と合わせβ遮断薬内服を加え経過観察の方針とした。5か月後に実施した3D-CTではLSに明確な進行はなく、更にその7か月後に行った4回目のCAGでは、Seg1瘤遠位部におけるLS狭窄率41%と若干の進行を認めたが、FFR値は0.89へと改善が確認された。将来的なriskを考えるとCABG、PCIなど侵襲的治療を選択すべきなのであろうが、FFR値が経時的に改善を示している事で治療法や治療時期の判断に難渋している。