[III-P87-02] 心停止原因精査にて判明した左冠動脈起始異常・開口部狭窄・大動脈壁内走行の1例
Keywords:冠動脈起始異常, 壁内走行, 心室細動
【症例】14歳の男児。これまで心疾患を指摘されたことはなかった。【現病歴】サッカーの部活後に突然倒れ、教師たちによるbystander CPR、AEDによる除細動にて救命された。AEDには心室細動が記録されていた。前医にて集中治療を受け後遺症なく改善し、精査目的で当院に転院した。【経過】臨床所見、安静時心電図、心臓超音波検査では当初明らかな異常所見を認めなかった。トレッドミル負荷試験で肢、胸部誘導でST低下を認め、負荷心筋dynamic CT perfusion検査や負荷心筋シンチグラフィー検査で前壁から下壁にかけて広範な領域での虚血が示唆された。また加算心電図検査においても陽性所見を認めた。冠動脈精査のため造影CT検査、心臓カテーテル検査を施行した。左冠動脈は大動脈開口部に高度狭窄を認めカテーテル挿入できなかった。また右冠動脈からの発達した側副血行路で左冠動脈領域が還流されていた。造影検査においても狭小化した左冠動脈開口部を認め、開口部はLCC-NCC commissureから起始していた。以上より、左主幹部に起因する心筋虚血に伴う心室細動と診断し、手術治療の方針とした。手術所見として開口部とLMT分岐にずれがあり、左冠動脈大動脈壁内走行と判断した。左主幹部の開口部は1mmにも満たないもので、personet probeをガイドに隔壁を切除しLMT開口部まで隔壁を十分に切除した。続いてS-ICD植え込み術を行い、リードを胸骨左縁に留置し手術を終了した。術後経過は問題なく、造影CTで開口部の開存、冠動脈血流の改善を確認術後2週間で退院となった。退院後、失神等なく経過良好である。【結語】今回、左冠動脈の起始異常、開口部狭窄、大動脈壁内走行による心停止を生じた症例に対し、隔壁切除術とS-ICD植え込みを行い、良好な結果が得られた。本症例はLCC-NCC commissure部位からの起始異常及び壁内走行であったが同様の報告は少なく、文献的考察も交えて報告する。