[III-P88-06] 先天性心疾患児のインクルーシブ教育実現の現状と課題~北九州市保育施設のアンケート調査から~
キーワード:先天性心疾患, 保育, 発達
【背景・目的】先天性心疾患(以下CHD)児には、在宅酸素等の継続した医療的ケアを必要とする事があり、就園を敬遠される場合も多い。CHD児のインクルーシブ教育実現へ向け、現状を把握し問題点を明らかにする。【方法】北九州市の認可・未認可保育施設(362施設)を対象にCHD児就園状況・心肺蘇生法(CPR)講習開催率・AED設置率・看護師在園率・医療的ケア児の保育に関して調査を行った。障害児総合療育施設は今回の検討から除外した。【結果】238施設(65.7%)からの回答があり、26施設でCHD児31名が就園していた(全園児21,523人の0.14%)。CPR講習開催率84.5%、AED設置率70.3%、看護師在園率9.3%であり、認可保育園・幼稚園・こども園は7割以上の施設でCPR講習が開催されていたが、企業内・小規模・認可外保育施設は半数に満たなかった。CHD児在園有無による2群間の検討でAED設置率・CPR講習開催率・看護師在園率に差はなかった。医療的ケア児を受け入れた施設は、過去5年間で8施設(3.4%)であった。自由回答式の質問に対して、保育士不足・知識不足等の理由でCHD児の就園困難と回答した施設は、71施設中45施設(63.4%)であった。また主治医からの「怪我をさせないで」「顔色を見て内服させて」等の抽象的な指示に困惑するとの意見があった。【考察・結論】認可保育施設では高いCPR講習実施率・AED設置率などのハード面の環境は整いつつあるが、保育士の知識不足・医師の抽象的な指示などのソフト面の問題が主体であった。CHD児の病状をリスク分類し、保育側への情報を整理することが必要であると考えた。CHD児インクルーシブ教育実現へ向けて行政・保育・医療機関の連携システム構築を行い、CHD児およびその両親が安心して保育を受ける環境づくりに取り組んでゆきたい。