[III-P89-01] 若年成人家族性高コレステロール血症における造影頸動脈エコーによる栄養血管評価の臨床的有用性
キーワード:造影頸動脈エコー, 家族性高コレステロール血症, 動脈硬化
【背景】造影頚動脈エコー(CEUS)で検出可能な栄養血管(VV)の発達は、動脈硬化進展前に起こるとされるが、若年成人家族性高コレステロール血症(FH)例での臨床的意義は不明な点が多い。【目的】CEUSを用いて総頸動脈VVを観察し、FH例の病態進展に伴うVVの変化を評価する。【方法】対象はプラークのない若年成人FH26例(平均年齢 28.3歳)と年齢をマッチさせた健常対照(C群)8例。頚動脈内膜中膜複合体厚(CIMT)と弾性特性(Ep)を測定後にCEUSを施行した。ソナゾイド0.01ml/kgをbolus投与し、東芝社製Aplio400の造影モードで総頚動脈分岐部near wallのVVを観察した。また総頚動脈壁内(W)と内腔(L)にROIを設定し、time-intensity curveのEnhanced Intensity(EI)[Peak Intensity-Baseline Intensity]とその比EIW/EILを求めた。FH例はCIMT年齢別基準値よりの差(SD)とスタチン使用の有無から3群(G-1 (n=8): SD<+2.0; G-2 (n=9): +2.0<SD<+2.5; G-3 (n=9): SD>+2.5かつスタチン投与)に分け各指標を比較した。【結果】年齢、性別、EILに4群間で差は認められなかった。EpはC群に比べ、G-1、G-2、G-3群で有意(p=0.003)に増加していた。EIw/EILは、G-2群が、C、G-1、G-3群に比べ著明に増加(p<0.001)していたが、C群とG-3群に有意差は認めなかった。G-3群を除く3群の検討では、CIMTはEIW(r=0.81)、EIW/EIL(r=0.75)、Ep(r=0.75)と有意相関が得られ、重回帰分析ではCIMTに最も関与する因子はEIW/EIL(β=0.504)であった。スタチンを使用していない患者でCIMT>+2.0 SDを動脈硬化病変と規定した時、EIW/EIL比0.49以上では病変存在の可能性が示唆された(OR=36.0、AUC=0.92)。【結論】EIW/EIL比の増加は総頚動脈VVの増生を意味し、スタチン使用によりVVの増生を抑制することが示された。またVVはCIMTの変化より先行して変動することから、頚動脈CEUSは若年FH患者において治療効果を判定できる非侵襲的な検査法となりうる可能性が示唆された。