[III-P92-01] 肺高血圧に対する段階的心房中隔欠損孔閉鎖術の経過中に急激に進行した大動脈弁輪拡張症に対し大動脈基部置換術を同時に施行した若年女性の一例
Keywords:肺高血圧, 大動脈基部置換術, Filamin A異常
【背景】肺高血圧(PAH)を合併した心房中隔欠損症(ASD)患者に対するASD閉鎖術は慎重に適応を決定する必要がある。今回段階的にASDを閉鎖している間に急激に大動脈病変が進行した症例を経験したので報告する。【症例】19歳女性。出生後にASD、肺動脈弁狭窄症と診断され生後3か月時に経皮的肺動脈形成術施行。肺動脈弁閉鎖不全症の増悪認め生後10か月時右室流出路再建術を施行した。2歳時の心臓カテーテル検査にて平均肺動脈圧(PAP)28mmHでありPAHと診断された。その後PAP39mmHgと増悪、3歳時に酸素投与と肺血管拡張薬(ドルナー、フローラン)を導入。ヴォリブリスも追加し(12歳)、15歳時の心臓カテーテル検査にてPAH18mmHgと改善を認めた。この時径48.6mmの大動脈弁輪拡張症(AAE)が初めて指摘されたが、大動脈弁閉鎖不全症(AR)を認めず、外科的介入は行わない方針となった。16歳時に肺動脈弁置換術(bicuspid valve of PTFE)およびASD半閉鎖術(8mm fenestrated PTFE patch)を施行。18歳時にはフローランからウプトラビへ置換した。19歳時の心臓カテーテル検査でPAP 17mmHg、Qp/Qs 1.36、PVR 1.6 Wood unit・m2、AR Seller 2°、経食道心エコーにてAR moderate、AAEは径64mmとAAE・ARの急激な進行を認めた。この時点でASD及びAAE・ARに対し手術を施行する方針となり、ASD閉鎖術、大動脈基部置換術を施行した。Valsalva洞の拡大は非対称性であり、大動脈弁温存することは困難であった。また、術中所見で瘤の右房への穿通が確認された。術後経過は良好で術後32日目に自宅退院となった。【考察】PAHを合併したASDに対し段階的ASD閉鎖の経過中にAAEの急激な進行をきたし大動脈基部置換術を要した症例を経験した。本症例ではFilamin Aの異常が指摘されており、大動脈病変の急激な進行に寄与した可能性がある。今後は同様な症例に対しより早期の外科的介入を視野に入れる必要があると考えられた。