第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

外科治療

ポスターセッション92(III-P92)
外科治療 9

2019年6月29日(土) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (大ホールB)

座長:木村 成卓(慶應義塾大学医学部 外科(心臓血管))

[III-P92-04] 成人Ebstein奇形に対する2手術の経験~Carpentier repair, one and a half ventricular repair~

水本 雅弘, 内田 徹郎, 浜崎 安純, 黒田 吉則, 山下 淳, 廣岡 秀人, 石澤 愛, 赤羽根 健太郎, 貞弘 光章 (山形大学医学部 外科学第二講座)

キーワード:Carpentier repair, one and a half ventricular repair, Ebstein anomaly

【背景】成人Ebstein奇形は稀であるが,三尖弁,右室形態の多様性から様々な手術戦略の工夫がされている.今回われわれは成人Ebstein奇形の2手術を経験し良好な結果を得たので文献的考察を踏まえ報告する.【症例1】63歳男性.幼少期にEbstein奇形の診断を受けたが無症状であり経過観察とされた.三尖弁閉鎖不全症(TR)の増悪,心房細動の合併による心不全のため手術適応と判断された.Carpentier type Aの術中所見であり,右房化右室をvertical plication後に前尖と後尖を正常弁輪部位に縫合する三尖弁形成術(Carpentier repair)とMaze手術を施行した.術後8年,TR増悪や心不全再燃なく,洞調律を維持し経過良好である.【症例2】67歳女性.幼少期に心雑音と運動制限を言われていたが詳細不明であった.53歳,下肢静脈瘤の手術時にEbstein奇形の診断となり無症状であるため経過観察とされた.その後,心エコーでTR増悪と低酸素血症を認めた.右心不全,TR増悪による心房中隔欠損を介した右左短絡による低酸素血症が労作時呼吸困難の原因と判断され手術適応となった.術前精査でCarpentier type C~D,機能的右室の狭小化を認めた.中隔尖と後尖は同定困難な程plasteringが著明であり,The Cone reconstructionを施行するも機能的右室の容量が非常に小さく,biventricular repairは困難と判断しone and a half ventricular repairの方針とした.術後主要合併症なく,経過良好である.【考察】成人Ebstein奇形に対する手術として,右房化右室の縫縮および三尖弁手術(形成術または弁置換術)の報告が多いが,機能的右室の容量によっては症例2のように,one and a half ventricular repairの選択もありうる.【結語】Carpentier typeの異なる成人Ebstein奇形の2手術を経験し良好な結果を得た.成人Ebstein奇形においても,三尖弁だけでなく,右室形態に応じた手術戦略が重要である.