第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

肺循環・肺高血圧

ポスターセッション93(III-P93)
肺循環・肺高血圧 7

2019年6月29日(土) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (大ホールB)

座長:犬塚 亮(東京大学医学部附属病院 小児科)

[III-P93-01] Alveolar Capillary Dysplasiaに対して片側生体肺移植を施行した一男児例

荒河 純子1, 馬場 志郎1, 衣川 佳数2, 松田 浩一1, 赤木 健太郎1, 吉永 大介1, 平田 拓也1, 陳 豊史3, 池田 義4, 伊達 洋至3, 滝田 順子1 (1.京都大学医学部附属病院 小児科, 2.手稲渓仁会病院 小児循環器科, 3.京都大学医学部附属病院 呼吸器外科, 4.京都大学医学部附属病院 心臓血管外科)

キーワード:ACD/MPV, 肺高血圧, 肺移植

【背景】Alveolar capillary dysplasia with misalignment of the pulmonary veins (ACD/MPV)は胎児・新生児期における肺発育障害によって引き起こされる大変稀な疾患である。40%の症例でFOXF1遺伝子異常が同定されるが、通常診断は肺生検で行われる。肺動脈の中膜肥厚、肺静脈のうっ血と末梢気管支拡張が特徴的な組織像で、多くは生後48時間以内に肺高血圧を伴う呼吸不全症状を呈する。実際の症例数は不明であるが、殆どの症例が数日で亡くなると言われている。今回我々は6歳まで生存した本症例に対して片側生体肺移植を施行し、状態の改善を得た症例を経験した。【症例】症例は6歳男児。在胎出生時、1か月検診では特記すべき所見は認めなかった。生後3か月頃から啼泣時の顔色不良や末梢冷感が出現し、体重増加不良も認めた。体重増加不良精査のため近医受診したところ、SpO2 70%とエコーで心房中隔欠損と肺高血圧所見を認め、精査のために前医紹介となった。各種検査と肺生検でACD/MPVと診断された。その後、頻回の呼吸管理、ECMO導入を行なっており、利尿剤・肺高血圧治療薬内服、酸素投与+NPPV管理下、救命目的で6歳時に当院転院となった。当院のCT所見では極わずかに正常肺部分が残存し、その為に長期生存可能であったと考えられた。6歳4か月時に母親の右下葉を使用し右肺移植を施行した。術後経過は良好で、肺高血圧もエコー上は極軽度認めるのみであり、肺動脈・肺静脈の吻合部狭窄などの合併症も認めなかった。【結論】ACD/MPVは大変稀で致死的な疾患であるが、長期生存する症例も僅かに存在する。しかしながら学童期まで達する症例は殆ど報告がなく、肺移植の良い適応疾患であり予後改善に貢献できると考える。