[III-P93-02] FOXF1遺伝子のミスセンス変異によりAlveolar capillary dysplasia with misalignment of pulmonary veins(ACD/MPV)が疑われた一例
キーワード:ACD, 肺高血圧症, FOXF1
【背景】 Alveolar capillary dysplasia with misalignment of pulmonary veins(ACD/MPV)は生後早期に致死的な経過をたどる予後不良な疾患である。今回、本疾患が疑われたASD、severe PHの乳児例を経験したので報告する。【症例】 症例は4か月男児。健診時にチアノーゼを指摘され、前医でASD、PHが疑われたため当院へ紹介入院となった。不穏で容易に低酸素血症が増悪するため人工呼吸器管理の上で酸素・NO投与を開始した。造影CTでは肺塞栓、肺静脈狭窄はなかったが、肺動脈は低形成で肺はびまん性にすりガラス陰影を呈していた。心臓カテーテル検査ではQp/Qs 0.69、Rp 11.5Wood単位・m2、平均PA圧 31mmHg、平均PV圧 9mmHgで、NOを減量するとRp増悪および酸素化不良を来すため、肺血管拡張剤の効果はあるだろうと考えたが、肺血管拡張剤を導入後に肺うっ血が増強し、PVODに類似した経過だった。多少の低酸素血症を許容して投薬調整を行い、NOは約1か月、エポプロステノールは約4か月で漸減・中止ができ、酸素投与および内服療法のみの管理に移行できた。先天性の肺形成異常を疑い、遺伝子解析を行ったところFOXF1にヘテロ接合性にc.223T>C, p.Tyr75Hisのミスセンス変異を認め、両親には同遺伝子変異はなくde novo変異であることも確認し、PHはACD/MPVによるものと考えられた。【考察】 ACD/MPVの典型例は生後早期に重症肺高血圧症で死亡し、病理解剖で診断されることが殆どである。本症例は大きなASDがあったため、低酸素には陥りやすいもののPH crisisを回避できたことで生存できている可能性が考えられた。緩徐ながら体重増加が得られる状態に落ちついており、肺移植を視野に入れて治療を進めている。【結論】 PVOD様の臨床経過をたどるPH症例の中にはACD/MPVが潜在している可能性がある。