[III-P93-05] 骨髄移植後に肺高血圧症を発症した若年性骨髄単球性白血病の1例
キーワード:肺動脈性肺高血圧, 骨髄移植, GVHD
【緒言】骨髄移植後の心血管系合併症として薬剤性心筋症、放射線関連漿膜炎などが知られているが肺高血圧症の合併は稀である。【症例】症例は1歳9か月男児。生後10か月時に若年性骨髄単球性白血病の診断で、1歳6か月時に非血縁間同種骨髄移植を施行した。術後はタクロリムスおよび短期間のメソトレキセート投与でGVHD予防を行い、早期GVHDとしては下痢と口唇粘膜障害を認めるのみであった。移植後60日目頃より多呼吸、酸素化低下および顎下腺腫大を認め、胸部CTで斑状影、結節影を認めた。尿中および唾液中にサイトメガロウイルスを検出し、同感染症に対し治療を開始し、タクロリムスを減量した。1か月後の胸部CTで肺病変の改善を確認したが、偶然に心嚢液貯留を認めた。2p亢進と3音を聴取し、BNP433.4pg/mL(前回24.0pg/mL)と上昇していた。心エコーで全周性の心嚢液貯留と右心系拡大を認め、推定右室圧55mmHgと上昇していた。心臓カテーテル検査ではmean PAP 39mmHg、肺動脈楔入圧8mmHg、PVR 7.22Wood単位、Pp/Ps 0.58と肺高血圧症の所見であり、シルデナフィルを開始した。同時期に蛋白尿の増加と低アルブミン血症を認め、GVHD関連の病態を想定し、ステロイド投与を併用した。治療開始2か月後の心臓カテーテル検査ではmean PAP 22mmHg、PVR 2.77Wood単位、Pp/Ps0.25と速やかに改善していた。【考察】本症例は心臓カテーテル検査より肺動脈性肺高血圧と診断したが、その原因として骨髄移植に使用した薬剤の影響や、タクロリムス減量後に発症した経過からGVHDの病態が関与した可能性が推察された。骨髄移植関連の肺高血圧は稀ではあるが、一定数の報告があり、早期診断・治療のため定期的なBNPの測定や心エコー検査が必要と思われた。そして、その原因やリスク因子の解明が待たれる。