第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスターセッション

心血管発生・基礎研究

ポスターセッション95(III-P95)
心血管発生・基礎研究 2

2019年6月29日(土) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (大ホールB)

座長:馬場 志郎(京都大学医学部附属病院 小児科)

[III-P95-04] 早産児慢性肺疾患に合併する肺高血圧症のモデルラット作成および網羅的病態解明

山本 英範1, 深澤 佳絵1, 小野田 淳人2, 三浦 良介2, 呉 尚治2, 沼口 敦3, 佐藤 義朗2, 加藤 太一1 (1.名古屋大学大学院医学系研究科 小児科, 2.名古屋大学医学部附属病院総合周産期母子医療センター 新生児部門, 3.名古屋大学医学部附属病院 救急部)

キーワード:Pulmonary hypertension, Bronchopulmonary displasia, Mass spectrometry

【緒言】早産児慢性肺疾患(CLD)の原因は未熟性や生後急性期の酸化ストレスなどの関与が報告されているが、合併する肺高血圧症(PH)の発症機序は未解明である。実臨床では前述の急性期誘因から離脱した出生後遠隔期にPHを生じる症例も散見されるため、それらのみでは発症機序を説明できない。動物実験では新生仔ラットに14日間高濃度酸素を負荷することで作成する「急性期CLDモデル」が古くから確立しているが、当モデルでも遠隔期のPH発症機序は解明困難である。
【目的】モデルラットを用いてCLDの遠隔期にPHを発症する機序を解明する。
【モデル作成】前述の急性期CLDモデルを室内気でさらに14日間飼育したところ、PH、右室肥大が急性期CLDモデルよりも統計学的有意に増悪した(遠隔期PHモデル)。このモデルは「急性期誘因を離脱した遠隔期にPHを発症する」という実臨床像に合致するモデルである。【方法】急性期CLDモデル(Early:E群)、遠隔期PHモデル群(Late:L群)、Control:C群の肺組織から全蛋白を抽出し、質量分析(ショットガンプロテオミクス法)を行った。各モデルでC群に比して2倍以上、または0.5倍以下に変動した蛋白を抽出しBiological processに着目して、Gene ontology termによるCluster分類を行った。
【結果】PH発症に関連しうるものとして、E群では「血管新生」に関連する蛋白 に変動を認めたが、L群では改善していた。またE群、L群を通じて「一酸化窒素(NO)への細胞応答」に関連する蛋白の変動が目立った。
【考察】CLDに合併する遠隔期PHの原因として、NOへの細胞応答の異常が関与する可能性が示唆された。今後、変動が認められた蛋白のうち、ヒトでも肺で発現しているものについて、免疫染色やウエスタンブロットを用いて検証するとともに、治療ターゲットとしての妥当性を検討する予定である。 本結果はCLDのみでなく種々の肺疾患に合併するPHの原因解明にも応用できる可能性がある。