[III-P96-01] 二次孔欠損型心房中隔欠損症における左右短絡および右室拡大に影響する因子についての検討
キーワード:ASD, 心室コンプライアンス, Stiffness K
背景;心房中隔欠損症(ASD)の左右短絡の程度は欠損孔サイズと左右心室のコンプライアンスに規定され、右室流入血流の増加に伴い右室拡大が進行すると考えられているが、左右短絡および右室拡大に各因子が及ぼす影響について検討した報告は少ない。目的;ASDにおける左右短絡および右室拡大の指標と欠損孔サイズ、左右心室のコンプライアンスとの関係を検討する。方法;2008-2018年、当院で閉鎖術を行った他の心合併症のない二次孔欠損型ASD症例の治療前のカテーテル検査結果を後方視的に検討した。左右短絡の指標としてFick法で求めたQp/Qsを、右室拡大の指標として右室造影の拡張末期容積の対正常比の百分率(RVEDV%N)を、欠損孔サイズは血管造影または経食道エコーで計測した最大径を体表面積の平方根で除した値、左右心室のコンプライアンスの指標に各心室のchamber stiffness (K)を計算し用いた。結果;全症例65例、年齢の中央値 5.9歳(6.3ヶ月-14.6歳)、体重 18.0±8.7 kg、Qp/Qs 2.39±0.77、RVEDV%N 154.9±38.7%、欠損孔サイズ 17.3±6.3mm/m、肺血管抵抗(Rp) 1.29±0.70 U/m2 、RV stiffness (K) 0.073±0.034 mmHg/ml・m2、LV stiffness (K) 0.151±0.075 mmHg/ml/m2であった。Qp/Qsは欠損孔サイズ(R=0.384)及びRp(R=-0.283)と有意な相関(p<0.01)を示した。またRV stiffness(K)と弱い負の相関(R=-0.171)を示したが有意水準を満たさなかった。RVEDV%Nは欠損孔サイズ(R=0.328)、RV stiffness (K)(R=-0.426)及び左右心室の stiffnessの比(LV stiffness (K)/RV stiffness (K))(R=0.422)と有意な相関(p<0.01)を示した。多変量線形回帰分析では欠損孔サイズ、RV stiffenss (K)、左右心室のstiffnessの比はいずれも右室拡大の独立した予測因子(p<0.01)であった。結語;ASDにおける左右短絡は欠損孔サイズとRpに規定され、右室コンプライアンスの絶対的および相対的低下と右室拡大との間に比較的強い関係が見られた。