[III-PD09-03] 先天性心疾患における血管形状と流れの構造からエネルギー損失分布に至る関係性の把握
キーワード:シミュレーション, エネルギー損失, 渦構造
先天性心疾患を有する血管形状においては様々な特徴的な流れの場が形成され、拍動に伴う流速の変化が、壁面剪断応力やエネルギー損失の分布に大きく影響している。我々は、数値シミュレーションを用いることでそのメカニズムを探り、血管の形状の違いから血流の特徴的な構造を通してエネルギー損失の分布に至る関係を理解しようとしている。具体的に取り上げているのは大動脈縮窄症の術前・術後の形状を用いた比較と、左心低形成症候群に対するノーウッド手術後の形状を用いた流れの特徴の把握である。大動脈縮窄症の術前形状においては縮窄部の下流に旋回流領域が形成され、その流体力学的不安定性が、高い壁面剪断応力(WSS)やエネルギー損失をもたらしていることを見てとることができる。ノーウッド手術後の形状を用いたシミュレーションにおいては、吻合部の断面形状の変化によって強い渦が形成され、それが下行大動脈部に流れ下ることで、広範囲にエネルギー損失が起きることを示唆している。
近年は生体内の様々な現象に対して数値シミュレーションが適用されるようになってきているが、特に先天性心疾患のような複雑な臓器形状に対する血流シミュレーションを実行するには、医用画像から対象となる領域の形状を抽出するセグメンテーションに始まって、エコーやPC-MRIなどのデータを用いた境界条件設定やその他の様々な条件設定から、シミュレーションの実行を経て結果の可視化に至るまで、数学・計算科学の知識と医学の知識の両方が必要となる。これは一般的には困難なことではあるが、我々は心臓血管外科医と数理科学者との緊密な協働によってこの壁を乗り越えようとしている。そのような取り組みについてもご報告したい。
近年は生体内の様々な現象に対して数値シミュレーションが適用されるようになってきているが、特に先天性心疾患のような複雑な臓器形状に対する血流シミュレーションを実行するには、医用画像から対象となる領域の形状を抽出するセグメンテーションに始まって、エコーやPC-MRIなどのデータを用いた境界条件設定やその他の様々な条件設定から、シミュレーションの実行を経て結果の可視化に至るまで、数学・計算科学の知識と医学の知識の両方が必要となる。これは一般的には困難なことではあるが、我々は心臓血管外科医と数理科学者との緊密な協働によってこの壁を乗り越えようとしている。そのような取り組みについてもご報告したい。