[III-S10-02] 適応拡大の可能性:肺循環の面から;薬物治療,カテ治療など
Keywords:Fontan, 肺循環, カテーテル治療
50%ルールにもとづいて単心室と定義される心室形態や,一側房室弁閉鎖ないし狭窄(例: 三尖弁閉鎖,左心低形成症候群)の他に,心内構造が複雑で,二心室分割が困難と判断される形態(Swiss-cheese型多発性心室中隔欠損,房室交叉,房室弁袴乗,房室中隔欠損など)がFontan型修復の対象となる.Total cavopulmonary connection (TCPC)を主とするFontan型修復は,難しい二心室分割と比較して手技が容易であり,条件さえよければ早期成績も良好であることから広く適用されてきた.一方,近年では姑息的修復治療との位置づけが共通認識となり,肝線維症,蛋白漏出性胃腸症などの合併症,妊娠出産の点からFontan循環そのもの長期予後が問題視されている.そのため,Fontan循環そのものは「良好」とはなり得ず,潜在的なものも含めた低心拍出性心不全およびうっ血性心不全を極力軽減し,肺循環心室を欠いた循環を「最適化」する努力が必要となる.まずは,方針決定,予後推定のために,正確かつ多角的な画像診断,循環動態評価,電気生理学的評価が不可欠である.段階的治療過程において,血管床が広くかつ抵抗の少ない肺循環の確立は最重要な目標のひとつである.そのために,薬物治療,カテーテルインターベンション・アブレーションも治療成績向上に寄与すると考えられる.さらに近年では,困難な心内修復もしくは境界域低形成心室の成長促進により,できる限り肺循環心室を利用すべく手術手技向上が望まれ,右室低形成ないし三尖弁狭窄・逆流を伴う場合は,上大静脈をGlenn吻合とし,下大静脈を主とする残りの静脈還流を低形成右室経由で肺動脈に駆出する1.5心室修復の適用も積極的に検討する.本講演では,このような複雑心疾患群の診断治療過程について概説する.