第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム11(III-S11)
学校検診で心臓突然死をどのように予防できるか、突然死に至った例の学校検診での所見

2019年6月29日(土) 10:10 〜 11:40 第3会場 (大ホールC)

座長:住友 直方(埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓科)
座長:三谷 義英(三重大学病院 小児科)

[III-S11-01] 心筋症症例からみた学校心臓検診と心臓突然死

廣野 恵一 (富山大学)

キーワード:学校心臓検診, 心筋症, 心臓突然死

【背景】学校心臓検診のガイドラインでは、学校心臓検診の目的は、心疾患の発見や早期診断をすること、心疾患をもつ児童生徒に適切な治療を受けさせるように指示すること、心疾患児に日常生活の適切な指導を行い児童生徒を援助すること、心臓突然死を予防することなどとされる。就学年齢の小児に起こる死亡例の原因として、心血管系疾患によると考えられる例が約7割を占める。また、就学中の小児や若年者の突然死の20~30%は心筋症が原因である。
【目的と方法】心筋症の臨床像と学校心臓検診の寄与を明らかにするために、小児慢性特定疾病レポジトリーから心筋症患者をリクルートし、309施設にアンケート調査を実施した。また、18施設を対象に後方視的にコホート研究を行った。
【結果】小児慢性特定疾病レポジトリーでは、治療を必要としたより重症例が登録されるため、診断の契機は症状(47.8%)、学校心臓検診(8.7%)、乳幼児健診(4.3%)であり、学校生活管理指導はE可(19.5%)、E禁(13.0%)、D(23.9%)、C(4.3%)、B(2.1%)となっていた。後方視的コホート研究では、診断契機は、学校心臓検診(43.4%)、症状(24.0%)、家族検診(5.8%)と学校心臓検診が多く認められた。治療は37例で、8例(18.2%)は学校心臓検診で診断された症例であった。心移植は1例、死亡は4例であり、学校心臓検診で発見された症例も1例含まれていた。院外心肺停止は5例であった。fragmented QRS、J波といった心電図異常が2割程度見いだされた。
【結論】学校心臓検診により無症状で診断される症例の2割近くがその後治療を要することを明らかとした。症例を蓄積し、診断基準の確立、症状出現前の生活指導、治療開始基準の確立が必要と考えられた。本シンポジウムでは症例も交えて学校心臓検診の役割について提起したい。