[III-TRO03-02] 動圧軸受遠心ポンプBIOFLOATを用いた小児左心補助2症例の経験
Keywords:遠心ポンプ, 左心補助, 重症心不全
【緒言】小児重症心不全の急性増悪により遠心ポンプを用いて左室心尖部脱血-上行大動脈送血とする一時的左心補助法(t-LVAD)を行うことがある.従来ECMOやt-LVADに用いている遠心ポンプは充填量が多く,低灌流量による血栓形成,溶血等の問題がある.今回,新たに開発された動圧軸受遠心ポンプ(BIOFLOAT)をt-LVADとして小児重症心不全症例2症例に使用したので報告する.【症例1】生後11ヶ月女児,身長65cm,体重5.8kg,DCM急性増悪により他院にてcentral-ECMOが導入され,心臓移植目的のため当院搬送となった.心臓移植登録までのサポートとしてt-LVADへ移行した.【症例2】年齢5歳,女児,身長112cm,体重19kg,劇症型心筋炎のため他院にてperipheral-ECMOが導入されたが心機能の改善を認めず当院搬送,t-LVADへ移行した.両症例ともt-LVADシステムはBIOFLOATとBIOCUBE(人工肺)を用いて構成した.【結果】症例1の補助期間は7日,平均回転数3,680rpm,平均灌流量1.02L/minであった.移植登録後の7病日にEXCORへ移行した.症例2の補助期間は7日,平均回転数4,155rpm,平均灌流量1.74L/min,心機能の改善を認め8病日に離脱となった.2症例共に生化学検査ではLDH,Bil,FDPの異常上昇はなく,血小板の低下も認めなかった.血清遊離ヘモグロビン値は50mg/dL以下で推移した.症例2において回路接続部に血栓の付着を認めたため回路交換を行ったが,2症例とも遠心ポンプ内での血栓形成は認めなかった.【考察】BIOFLOATポンプの充填量は16mLと小型,低容量でありながら,低流量の使用においても安定した流量確保が可能であった.更に動圧軸受によりインペラが浮上している点やヘパリンコテーティングにより溶血発生,血栓形成のリスクが低く,経験した症例の結果からも更なる長期使用の可能性が示唆された.【結語】低容量の動圧軸受遠心ポンプを小児t-LVADとして2症例に導入した.小児t-LVADにおいて,危惧される溶血や血栓形成等のトラブルの発生もなく管理し得た.