[III-TRO03-05] 心室細動を来した成長期男児に対し、S-ICDの植込みを行った1例
Keywords:S-ICD, 心室細動, AED
症例は14歳、生来健康な男児。サッカーの練習後、心室細動(VF)による心肺停止を来した。速やかに教員によるBystanderCPRが施行され、AEDによる電気的除細動1回で洞調律に復帰した。近医に救急搬送後、低体温療法が施行され、幸い高次機能障害は認められなかった。今回、VFの精査加療目的にて当院に紹介入院した。精査の結果、冠動脈起始部異常が認められ冠動脈形成術を施行された。心臓突然死2次予防のため、皮下植込み型除細動器(S-ICD)を植込む方針となった。S-ICDのスクリーニングを実施したところ、プライマリ極性、オルタネイト極性は適合し、セカンダリ極性は不適合であった。通常S-ICDの植込みは、胸骨剣状突起左縁およびリード先端部を固定するが、本症例は、成長期段階であり、成長に伴うリード牽引が懸念されるため、リード先端部を固定しない2-incision法を施行した。植込み術後の除細動閾値テスト(DFT)ではVFをアンダーセンシングすることなく65Jで除細動が施行され洞調律に復帰した。最終的なS-ICDの極性設定はプライマリ極性を用いた。植込み術後、VFは認められておらず、遠隔モニタリングを導入し経過良好である。2-incision法は3-incision法に比較し、手技時間の短縮、成長期段階の症例にも対応することが可能である。また、経静脈植込み型除細動器(TV-ICD)と比較し、心臓植込みデバイス自体による運動制限がなく、感染症によるリスクも低いと言われている。さらに、経過によって将来的にデバイスが不要となった場合は、デバイスを完全に抜去できる点も大きなメリットである。今回、2incision法を用いたS-ICDの植込み術を経験したので文献的考察を交えて報告する。