[III-TRO05-05] 長期間の単独入院を経て幼児期に心臓移植を受けた患児・家族への看護 ~移植待機期間から心臓移植後の看護師の関わり~
Keywords:心臓移植, 単独入院, 幼児期
【背景】日本における小児の心臓移植は極めて少なく、待機期間は長期化している。今回、乳児期に拡張型心筋症を発症し幼児期に心臓移植を受けた患児の看護を行った。【目的】移植待機期間から心臓移植後の看護を振り返り、今後の看護に活かすこととした。【方法】移植待機期間と心臓移植後の期間に分け、看護実践を記録から振り返った。倫理的配慮として研究目的、プライバシーの保護などについて説明し、家族から口頭と文書で同意を得た。【結果】待機期間が長期化したことによる家族負担から、移植までの約1年は単独入院となった。患児の自発性を尊重しながら治療上必要な厳しい制限が守れるように、担当看護師が中心となり食事や水分制限、プレイルームでの遊びや保育時間、午睡時間など1日の生活リズムや日々の受け持ち看護師の関わりを統一した。さらに、患児の成長発達のためには家族とのふれあいが必要と考え、医療者が同席せずに毎週末家族だけで過ごす時間を積極的に設けた。患児は24時間持続静注による行動制限があったため、動きが妨げられないよう支柱台を使用しないミニポンプを導入し、安全に幼児期のきょうだいと一緒に遊べる工夫をした。移植後は付き添いを開始し直接ケアを行う両親と祖母にそれぞれ指導を行った。家庭生活に不慣れである患児のケアや移植後の厳重な管理に母親の不安も強く、訪問看護を導入し家族への支援を継続した。また自宅での生活経験のない患児が環境の変化に戸惑うのではないかと考えたが、家での生活を家族全員が楽しみにしておりスムーズに退院できた。【考察・結論】移植待機期間は患児・家族にとって終わりの見えない入院生活となる。そのなかで患児と家族が共に過ごす時間を定期的に設けたことが、患児の成長発達を促すのみでなく家族全員の絆が深まることにつながり、自宅での生活経験のない患児が移植後スムーズに家庭生活へ移行することができたと考える。