第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

会長要望演題

会長要望演題5(III-YB05)
小児心筋症の今後

2019年6月29日(土) 08:30 〜 09:20 第4会場 (中ホールA)

座長:小垣 滋豊(大阪急性期・総合医療センター 小児科・新生児科)
座長:廣野 恵一(富山大学医学部 小児科)

[III-YB05-02] 小児期拡張型心筋症の臨床像および治療と予後

堀米 仁志1, 野崎 良寛1, 安田 和志2, 西原 栄起3, 鮎澤 衛4, 小垣 滋豊5, 岩本 眞理6, 土井 庄三郎7, 大野 聖子8, 住友 直方9, 吉永 正夫10 (1.筑波大学医学医療系 小児科, 2.あいち小児保健医療総合センター 循環器科, 3.大垣市民病院 小児循環器新生児科, 4.日本大学医学部附属板橋病院 小児科, 5.大阪急性期総合医療センター 小児科, 6.済生会横浜市東部病院 小児科, 7.東京医科歯科大学 小児科, 8.国立循環器病研究センター, 9.埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓科, 10.鹿児島医療センター 小児科)

キーワード:拡張型心筋症, 心エコー, 小児

【背景と目的】わが国の学童院外心停止の約30%は心筋症であり、心不全死は拡張型心筋症(DCM)に多い。一方、小児期特に乳児期に診断されるDCMのなかには心機能正常化例がある。そこで、わが国の小児期DCMの臨床像と予後を明らかにして、今後の診療ガイドライン策定に寄与することを目的とした。【方法】厚労省研究班所属施設を対象として、小児期DCM症例の臨床像、経時的心エコー所見、治療と予後等について後方視的に検討した。【結果】症例数88例(男48例)、診断時年齢:0~18y(中央値2.5y)、最多は1y未満で32例、次が1y~2y未満で10例。診断契機:新生児・乳児期は呼吸障害を含む心不全症状が多く、2~5yは神経筋疾患等に続発する症例や失神が加わり、6y以降は学校心臓検診抽出例が加わった。家族歴陽性例は14%(全例DCM)、遺伝子検査は5例に行われ、2例で変異検出。心エコー所見:初診時のLVEF:31.6±13.9%、2y未満発症例のうち14例で経時的にLVEFが改善し、ほぼ正常化した。薬物療法:半数以上の症例でACE阻害薬、β遮断薬、利尿薬が投与され、その他ジゴキシン、ARB等が用いられた。非薬物療法:LVADが6例、CRTが4例に行われた。観察期間中央値5.6年で、予後は死亡/脳死15例(内OHCA 12例)、心移植が6例に行われた。【まとめ】小児期DCMでは乳児期診断例の頻度が高く、その約1/3はLVEFが経時的に改善した。経時的改善例と死亡例の間で、初診時LVEFに差はなかった。小児期DCMの診療ガイドライン策定には、年齢別心エコー指標の標準値の確立、遺伝学的背景、合併疾患の関与を含めた予後不良・予後改善の予測因子の同定が重要である。【研究協力者(敬称略】石川友一、泉田直己、市田蕗子、牛ノ濱大也、太田邦雄、田内宣生、立野滋、長嶋正實、櫨木大祐、畑忠義、廣野恵一