[III-YB05-02] 小児期拡張型心筋症の臨床像および治療と予後
Keywords:拡張型心筋症, 心エコー, 小児
【背景と目的】わが国の学童院外心停止の約30%は心筋症であり、心不全死は拡張型心筋症(DCM)に多い。一方、小児期特に乳児期に診断されるDCMのなかには心機能正常化例がある。そこで、わが国の小児期DCMの臨床像と予後を明らかにして、今後の診療ガイドライン策定に寄与することを目的とした。【方法】厚労省研究班所属施設を対象として、小児期DCM症例の臨床像、経時的心エコー所見、治療と予後等について後方視的に検討した。【結果】症例数88例(男48例)、診断時年齢:0~18y(中央値2.5y)、最多は1y未満で32例、次が1y~2y未満で10例。診断契機:新生児・乳児期は呼吸障害を含む心不全症状が多く、2~5yは神経筋疾患等に続発する症例や失神が加わり、6y以降は学校心臓検診抽出例が加わった。家族歴陽性例は14%(全例DCM)、遺伝子検査は5例に行われ、2例で変異検出。心エコー所見:初診時のLVEF:31.6±13.9%、2y未満発症例のうち14例で経時的にLVEFが改善し、ほぼ正常化した。薬物療法:半数以上の症例でACE阻害薬、β遮断薬、利尿薬が投与され、その他ジゴキシン、ARB等が用いられた。非薬物療法:LVADが6例、CRTが4例に行われた。観察期間中央値5.6年で、予後は死亡/脳死15例(内OHCA 12例)、心移植が6例に行われた。【まとめ】小児期DCMでは乳児期診断例の頻度が高く、その約1/3はLVEFが経時的に改善した。経時的改善例と死亡例の間で、初診時LVEFに差はなかった。小児期DCMの診療ガイドライン策定には、年齢別心エコー指標の標準値の確立、遺伝学的背景、合併疾患の関与を含めた予後不良・予後改善の予測因子の同定が重要である。【研究協力者(敬称略】石川友一、泉田直己、市田蕗子、牛ノ濱大也、太田邦雄、田内宣生、立野滋、長嶋正實、櫨木大祐、畑忠義、廣野恵一