[I-LL01] 単心室外科治療の変遷と展望:福岡からのメッセージ
Keywords:単心室, 外科治療, Fontan
単心室とその類似疾患に対する機能的根治術であるFontan 手術が導入されて40 年以上が経過したが、この間、単心室の治療戦略は目覚ましい進歩を遂げてきた。一方、多くのFontan症例が成人期を迎えつつある現在、Fontan術後の特有な合併症も浮かび上がっている。本講演では、福岡の地で黎明期から単心室外科治療に従事した経験を振り返るとともに、今後の展望について私見を述べる。最終目標である「良い」Fontan手術を達成するためには、生後早期から肺血管床の発育を促すとともに低い肺血管抵抗を維持し、過度の心室容量負荷を避け心機能を保持する計画的な段階的治療戦略が必要となる。初回姑息手術としての体肺短絡手術や肺動脈絞扼手術は、次の段階であるGlenn手術が安全に行えるように治療方針や術式が改善されてきた。左心低形成症候群においては両側肺動脈絞扼術の導入、Norwood手術における右室-肺動脈心外導管法など様々な工夫が加えられて救命率が飛躍的に向上した。その他の合併病変へ治療方針として、房室弁逆流や総肺静脈還流異常はFontan手術までの様々な段階で積極的な修復手術が行われてきたが、生後早期の高度弁病変例や肺静脈閉塞を伴う総肺静脈還流異常例に対する対策は今後の課題となっている。Fontan手術としては、1980年代にAPC法に代わりTCPC法が導入され、手術適応基準が拡大した。TCPC法としては側方トンネル法から心外導管法へと変遷し、多くの施設で優れた生存率が得られるようになった。現在、ほとんどのFontan症例で優れたQOLが得られているが、成人期を迎える症例の増加に伴い、蛋白漏出性腸症、血栓塞栓症、低酸素血症、心不全、肝障害など様々な術後合併症の発生が予想される。正確な循環動態の把握とともに、低い静脈圧を維持するために長期にわたる綿密な術後管理と治療が必須である。