[I-OEP03-3] TBX5 R264Kは拡張型心筋症の一因となり心筋内のACTA1を代償性に増加させる
キーワード:TBX5, 心筋症, Acta1
【背景】TBX5はHolt-Oram症候群という先天性心疾患と橈側列形成不全を特徴とする症候群における原因遺伝子として報告されて以降、心臓発生と心筋細胞の成熟化の中心的な役割を担う転写因子であるが、近年、拡張型心筋症や心筋緻密化障害の患者において、R264Kの変異が散見される。【目的】TBX5遺伝子変異による心筋の機能障害を評価し、心筋症との関連を明らかにすること。【方法】Tbx5 R264Kのノックインマウスを作成し、病理学的、機能学的、電気生理学的に評価を行い、さらに遺伝子発現変動解析および蛋白定量解析を行い、TBX5変異により影響をうける経路を検索した。【結果】Tbx5 R264Kのホモ変異型マウスにおいて拡張型心筋症に類似する心収縮力低下と心拡大、壁の菲薄化を認めた。さらに加齢につれて組織学的に心筋の線維化が進行しリモデリングが観察された。ルシフェラーゼアッセイにおいてTBX5が直接作用する転写因子であるANFは活性が維持されていたため、従来のT-box pathwayとは別の経路に影響を及ぼしていると推測された。発現解析では36個の有意に発現変動した遺伝子を検出し、functional enrichment analysisでは生物学的プロセスにおいて心筋に関与しうる遺伝子群が示唆された。その中でもActa1の有意な発現上昇が認められ、ACTA1蛋白の増加が確認された。ACTA1はαアクチンのうち骨格筋におけるアイソフォームであるが、心不全において心筋細胞内で増加することが示されている。そのため、この結果は心不全におけるヒトおよびマウスの既報と一致し、代償性に増加していると考えられた。【結語】Tbx5 R264Kは先天性心疾患を伴わず、むしろ拡張型心筋症に類似した心収縮力低下を呈し、ACTA1の代償性増加を来した。