[I-OEP05-1] 小児心筋症における心筋線維芽細胞の生理機能ならびに病態関与の解析
Keywords:小児心筋症, 心筋線維芽細胞, RNA sequence
【背景】小児心筋症は稀な疾患であり、その病態メカニズムについては依然不明な点が多い。これまで、心筋細胞(CM)におけるサルコメア等の遺伝子異常が報告されているが、変異が同定されるケースは多くなく、また同一の遺伝子異常であっても表現型が大きく異なることもある。従って、心筋症の病態メカニズムは単にCMのみでは説明がつかないと考えられる。一方、心筋線維芽細胞(CF)は、心臓構成細胞の過半数を占め、心臓発生、恒常性維持、虚血障害等において様々な役割を果たしていることが報告されているが、心筋症病態における機能は解明されていない。【目的】心筋症におけるCFの生理機能やCMとの相互作用を解析し、心筋症の病態解明につなげる。【方法】患者心臓から単離したCFに対して、RNA-seqによる網羅的遺伝子発現解析、Cell physiology解析ならびにWhole-Exome解析による遺伝子変異の有無を検証した。RCM 5例、DCM 5例、正常対照3例について解析した。【結果】対象遺伝子数26,364についてiDEPで発現解析を行った。PCA (Principal Component Analysis)では、正常対照と比較してDCM、RCMのCFでは異なった遺伝子発現パターンを示した。DEG (Differential expression genes)解析では対象 vs DCMでup regulated (up) 620、down regulated (down) 545、対象 vs RCMでup 610、down 649、RCM vs DCMでup 1、down 1であった。一方で、増殖能、アポトーシス、遊走能、接着能に有意差を認めなかった。【考察】ヒトCFを用いたRNA-seqにおいて、正常対照とDCM、RCMとの間で遺伝子発現パターンに差異を認めた。心不全病態を反映した二次的な発現変化であるのか、CFのプライマリーな変化であるのか検討を進める必要がある。今後、疾患CFと正常CMの共培養実験を通じて、CFとCMとの相互作用が心筋症病態に及ぼす影響について検証していきたい。