[I-OEP05-2] 患者由来iPS細胞を用いたHOIL-1L欠損症における拡張型心筋症発症の機序解明
Keywords:心筋症, iPS細胞, 基礎研究
【背景】 近年、HOIL-1L欠損症が拡張型心筋症発症の原因となるという報告が散見されるようになった。HOIL-1Lは生体内において、直鎖ユビキチン複合体(LUBAC:Linear ubiquitin chain assembly complex)と呼ばれる複合体の一部を担い免疫応答や炎症に大きく関わる。従って、HOIL-1L異常症では免疫不全や自己炎症疾患症状を認めるが、同時に殆どの症例で心筋症を発症し心移植に至る。しかしながら、本疾患での心筋症発症機序は全く不明である。今回、我々は患者由来iPS細胞を用いて本疾患の心筋症発症機序について研究した。【目的】 患者由来iPS細胞を用い、HOIL-1L異常症の心筋における心筋症発症機序を解明すること。【方法】 骨格筋モデルとしてマウス筋芽細胞を使用し、CRISPR/Cas9システムによりHOIL-1Lノックアウト株を作製し、RNA seqによる網羅的解析を行う。次に患者iPS細胞を心筋へ分化させ、RNA seq結果に基づいて、心筋機能解析を行うことで心筋症発症メカニズムを解明する。【結果】 マウス筋芽細胞のHOIL-1Lノックアウト株のRNA seqでは筋構造・収縮に関わるgene setの変動を認めた。さらに、患者iPS心筋においても心筋細胞の発生異常を示唆する形態学的異常所見を認めた。【考察と今後の展望】 HOIL-1L異常症において、心筋の分化異常が心筋症発症の一因となっている可能性がある。今後は心機能低下の関係についても機能解析を進めていく予定である。