[I-OEP05-3] BMPR2変異はラット肺高血圧モデルにおいて進行期の病態と生命予後を悪化させる-CRISPR/Cas9ゲノム編集ラットを用いた検討-
Keywords:肺高血圧, ゲノム編集, 基礎研究
背景 骨形成因子2型受容体(BMPR2)変異は、肺動脈性肺高血圧(PAH)の主要な遺伝的危険因子と理解されている。臨床的に、BMPR2変異のあるPAH患者は、発症が早く予後が不良であることが示されているが、機序は不明である。マウスの肺高血圧(PH)モデルでは、進行性で高度の肺血管病変(PVD)作成は困難であったが、近年CRISPR/Cas9などゲノム編集の導入により、比較的容易にラットに遺伝子変異を導入できるようになり、進行性のラットPHモデルを用い遺伝子変異の意義の検討が可能となった。仮説 BMPR2変異は、モノクロタリン(MCT)誘発ラットのPHを悪化させる。方法 BMPR2遺伝子変異をCRISPR/Cas9により導入し、野生型ラットと交配し、挿入欠損を確認し変異型(+/-)とし、野生型(WT)同腹仔をコントロールとした。7週齢のWTと(+/-)にMCT,(60mg/kg)を皮下投与し、投与前7日、16日、21日、28日に、肺動脈圧、右室肥大(RV/[LV+S])、PVD、生存率の解析を行った。結果 WTではMCT投与後7日目には有意なPVDが形成され、16日には有意な肺動脈圧上昇が認められ21日にはさらに進行した。(+/-)ラットでは、BMPR2遺伝子に1塩基挿入によるミスセンス変異が確認され、肺組織BMPR2蛋白、並びに下流のSmadリン酸化が低下していた (p<0.01)。 MCT投与後7日、21日の検討では、WT、(+/-)ラットのPHは同等であった。(mean PAP:19.2 vs 19.4 [day7], p=0.91; 36.4vs 34.2 [day21], p=0.85; RV/[LV+S]: 0.28 vs 0.27 [day7], p=0.86; 0.45vs 0.41 [day21], p=0.59; %muscularization:58.9 vs 60.1 [day21], p=0.96). MCT投与21日以降死亡が観察され、(+/-)ラットの生存率は低くRV/[LV+S]は高かった(p<0.05)。結語 CRISPR/Cas9を用い、BMPR2変異の意義をPHの発症初期から進行期まで縦断的に検討した。BMPR2変異は、MCT PHラットの早期の肺血管病変形成には影響せず、進行期のPHと生命予後を悪化させた。