The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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パネルディスカッション

学校検診・突然死

パネルディスカッション01(I-PD01)
学校検診・突然死「心肺蘇生の普及啓発への地域と学校での取り組み」

Sun. Nov 22, 2020 8:00 AM - 10:00 AM Track2

座長:三谷 義英(三重大学大学院医学系研究科 小児科学)
座長:太田 邦雄(金沢大学附属病院 小児科)

[I-PD01-1] 【基調講演】学校における救命体制確立と救命教育促進を願って

三田村 秀雄 (立川病院 循環器内科)

Keywords:心停止, 心室細動, AED

突然の心停止の多くは心臓に原因があり、ほとんどは心室細動によって起こる。しかしその背景や病態は若年層と中高年層とで大きく異なる。後者の場合はAEDのない自宅で発生することが多いだけでなく、急性冠閉塞が誘因となっていると心筋傷害の進行が速く、加えて既に脳や腎臓などの機能も衰えていることもあってその救命は容易でない。
一方、若年者の心停止は比較的珍しいものの、心臓震盪に代表されるように、元々身体機能も心機能も保たれており、適切な蘇生術を施せば救命できる可能性が高い。とくに小中高の学校内で起こる心停止は、その8割以上が校庭、体育館、プールなどのスポーツ現場で、運動に伴って起こっている。これらの場所は、心停止の目撃、協力者の存在、近くのAED設置、といった救命に不可欠な3条件が揃っている。近年では学校内で起こる心停止の8割以上の例で、これら3条件が満たされており、その結果65%が救命されている。救命率のさらなる向上には、日頃から学校内における心停止を想定内の出来事と認識し、1分で取りに行ける場所にAEDを設置し、それを使った救命訓練を繰り返し行うことが重要である。
救命の担い手は教師や警備員にとどまらない。小学4年生以上の生徒であれば、適切な救命教育を受けていれば急変時に大きな力となる。その活躍の場は学校内に限らず、例えば自宅で42歳の父親が突然倒れた際、そばにいた小学5年生で1年前に学校の救命教室で蘇生術を習ったことのある長男が、胸骨圧迫を行って無事救命に導いた事例がある。ほかにも中学生のときに救命講習を受けたことのある女子高生が、地下鉄駅で倒れた男性にAEDショックを加えて救命した事例も報告されている。このように若者への早期からの蘇生教育は将来に向けて潜在的な市民救命士を増やす効果があり、全国の学校での積極的な取り組みが期待される。