第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

パネルディスカッション

学校検診・突然死

パネルディスカッション01(I-PD01)
学校検診・突然死「心肺蘇生の普及啓発への地域と学校での取り組み」

2020年11月22日(日) 08:00 〜 10:00 Track2

座長:三谷 義英(三重大学大学院医学系研究科 小児科学)
座長:太田 邦雄(金沢大学附属病院 小児科)

[I-PD01-2] 学校における心肺蘇生教育の普及啓発ー新潟PUSHの取り組み

高橋 昌 (新潟大学大学院医歯学総合研究科 新潟地域医療学講座 災害医学・医療人育成部門)

キーワード:心肺蘇生教育, 学校教育, PUSH

【背景】院外における心停止の救命には「たまたまその場に居合わせた人」の果たす役割が大きいことは明らかである。しかし、一般市民が目撃した心原性心肺停止の中で、実際に何らかの心肺蘇生が実施された人の割合は平成30年総務省統計によれば56.6%に過ぎず、AEDが実際に使用された割合は全体の約5%に過ぎない。日本国内のAED設置台数は急速に増加している一方、AEDの使用率はこの10年ほぼ横ばいである。つまり、そこにAEDがあるにも関わらず、AEDが使われないという実態がある。【目的】目の前で人が倒れたときにAEDを使った心肺蘇生ができる人を育てること、つまり学校における心肺蘇生教育の普及啓発は喫緊の課題である。学校における心肺蘇生教育が普及し難い理由の抽出と同時に、その課題を解決する方法を取り入れた心肺蘇生教育「PUSHプロジェクト」の新潟県内での普及の実際を紹介する。【方法】学校における心肺蘇生とAEDに関する調査報告書によれば、学校教育の中で心肺蘇生教育を「実施すべきなのに実施できない」理由として「講習時間が確保できない」「訓練資機材が足りない」「指導者がいない」「指導マニュアルがない」などが明らかになった。そこで、大阪ライフサポート協会が開発した「45分の授業1コマで完結」し、「1人1つのシミュレータを準備」し、「指導者を派遣」し、「指導マニュアルがなくてもDVDで標準的な指導が実施できる」PUSHプロジェクトを新潟県内で組織的に実施した。【結果】平成26年度から新潟県内で開始。平成29年度からHPを立ち上げWebでの情報発信と同時にWebからのコース開催申請を開始したところ、依頼件数が急増した。2020年1月現在で延330コース、約15,000人の受講実績を記録した。【結語】学校教育現場のニーズに応えたPUSHプロジェクトは学校における心肺蘇生教育の有用な施策と考えられる。