The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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パネルディスカッション

不整脈

パネルディスカッション02(I-PD02)
不整脈「最新の遺伝性不整脈の臨床」

Sun. Nov 22, 2020 3:30 PM - 5:30 PM Track4

座長:大野 聖子(国立循環器病研究センター 分子生物学部)
座長:青木 寿明(大阪母子医療センター 小児循環器科)

[I-PD02-5] ブルガダ症候群の基礎・臨床update

今村 知彦, 牧山 武 (京都大学大学院医学研究科 循環器内科)

Keywords:ブルガダ症候群, 突然死, 小児

ブルガダ症候群は、心電図上右側胸部誘導にて特徴的なcoved型ST上昇を示し、時に心室細動や突然死を来す遺伝性不整脈疾患である。中年男性に多く、夜間就寝中に突然死する症例が多い。有病率は、約2000人に1人とされ、90%以上が男性である。2つの発症機序が提唱されている。再分極異常説は、右室流出路の貫壁性電位勾配によりcoved型ST上昇と陰性T波が形成され、細胞間の再分極時間のばらつきによりphase 2 reentryが生じ、心室細動が誘起されるとする。一方、脱分極異常説は主に臨床的側面から提唱され、各種伝導異常の合併が多い点や、右室流出路心外膜側の伝導遅延部位から心室細動が発生し、同部位の焼灼が有効とするNademaneeらの報告が本仮説を支持している。右側胸部誘導における2mm以上のcoved型ST上昇により確定診断となる。心電図変化には日内変動がある他、満腹試験、糖負荷試験、運動負荷後の迷走神経亢進により初めてブルガダ型心電図が顕在化することもある。日本のレジストリーにてSCN5A突然変異が約15%で検出され予後予測因子となると報告された。これまでに20以上の原因遺伝子が報告され、近年のゲノムワイド関連解析(GWAS)により複数の遺伝子多型が複合的に病態を形成する可能性が示唆された。突然死予防の確実な治療手段はICDのみである。VFストームに対するisoproterenol、慢性期の予防としてquinidine、bepridil、cilostazol、これらが無効の難治例に対する右室流出路心外膜アブレーションなどの有効性報告が蓄積されつつある。小児ブルガダ症候群の報告は少なく詳細は不明だが、有病率は1万人に1人程度と推測されている。当グループにおける小児例の解析では、SCN5A突然変異が半数以上に見られ、思春期前までは有病率に性差がない、初発症状で致死性不整脈であることが少なくないなどの特徴が見出されている。今後、小児ブルガダ症候群のデータ蓄積が望まれる。