[I-PMDA-2] デバイスラグから学んだ産官学連携の重要性
Keywords:デバイスラグ, 産官学連携, off-label use
2002年9月米国において冠動脈薬剤溶出性ステント(DES)の再狭窄抑制効果が報告され、冠動脈インターベンション(PCI)は冠動脈疾患治療の中心的な役割を担うことになった。その後、欧米のみならずアジア諸国にもDESの臨床使用が開始されたが本邦は認められず、いわゆるデバイスラグの状態であった。我々はデバイスラグの問題は当初、企業、行政の問題と認識していたが、その頃米国の学会で行われていた産官学が一同に介して革新的デバイスの承認や適応拡大について議論するタウンホールミーテイング(THM)を参考に、インターベンション学会でTHMを企画した。ここでの様々な議論を通じて、デバイスラグの原因は我々医師にかなりの問題があり、高い科学的妥当性と高い倫理性、客観性を求めた良質な臨床試験を行うことが重要であることを認識した。デバイスラグ解決のためには早期からの国際共同治験を行うことが必要であり、日米の規制当局で始められていたHarmonization By Doing (HBD)のプロジェクトに参加し、下肢動脈に対して開発されたDESであるZilver-PTXの国際共同治験を行った。本品は日米同時審査が行われ、日本が米国よりも10ヶ月早く承認される逆デバイスラグの結果をもたらした。しかし、世界で初めて下肢動脈にDESの承認を取得した我が国ではOff-Label使用における安全性の担保を行うことが困難であることが予測され、施設限定で連続900例全例登録を義務付けた厳格な市販後調査(PMS)を行った。これ以降、本邦で承認された下肢動脈の新規デバイスは承認後限定した施設でPMSを施行し、その成績を踏まえて、使用施設を拡大していく方法が確立した。市販後はOff-Label使用にも適応が拡大するため、Real-World Dataを収集し分析する仕組みは重要であり、日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)ではレジストリー研究に力を入れ、その信頼性担保のために産官学で協議を行なっている。