[I-PMDA-3] Off-label useの現状と機器開発促進に向けた期待 --医療現場での実情と問題提起(外科医の視点から)--
Keywords:適応外使用, Device lag, Off label
『ある日のNorwood手術:いつもの送血管と使い勝手を考慮してのフェモラル静脈脱血管を用いて人工心肺開始。肺血流は右室-肺動脈間弁付きconduit(リング付きEPTFE人工血管とContegraを2弁化したもので作製)で確保し、両側PAB部の狭窄に対しては、一方は操作性を考慮してContegraの余剰壁を、反対側は3次元形態を考慮しEPTFE人工血管の余剰部のリングを外して切り開いたものを、各々パッチとして利用して形成。三尖弁前尖に開いたいた穴は、閉胸時に使用する予定のEPTFE心膜用シートの一部を利用して閉鎖。人工心肺からの離脱ができず、使用していた送脱血カニューレ、人工肺、人工心配回路を流用して補助循環を開始し、術後7日目も継続中。』この症例では未承認機器は使われていないが、承認されていない使い方で用いたため少なくとも7つの適応外使用が指摘されうる。日本では、一部を除いて基本的には適応外使用は保険適応として認められないため、査定対象となる。医薬品、医療機器の薬事承認は、 “用いることで、患者に利益が勝る”という客観的根拠(膨大な労力と時間を掛けてデータを積み上げて仕上げる)に基づいていることは真摯に受け止めるべきである。しかし、国や地域で承認基準が異なっているという事実が存在し、同時に、対象数が小さく客観的根拠を示しにくい領域(小児など)では承認を出し難いという共通課題もある。こうした背景から『ある国で承認、利用され始めた効果的と思われる医療を、別の国では提供できない』、『成人で実施可能になった医療を、小児では提供できない』というDevice lagが発生する。高い承認基準で安全な医療を目指し、達成してきたて日本は、期せずしてDevice lagが大きい国のひとつとなった。今こそ、小児にとって利益が勝る医療を適正に提供するという視点で“医療機器の開発促進、承認の迅速化、保険適応判断の適正化“に立ち向かうべきである。