[I-S01-2] 医師の働き方改革:大学病院のジレンマ
キーワード:医師の働き方, 大学, 小児循環器
医師の時間外労働規制が2024年4月から施行されることが決まっており、一般労働者の時間外労働の上限年間720時間に対して、医師は通常年間960時間(A水準)が上限となり、地域医療確保暫定特例水準(B水準)や集中的技能向上水準(C水準:研修医や高度技能育成が公益上必要な分野に受持する医師)が認められた場合のみ年間1860時間まで時間外勤務することが可能になります。連続勤務時間制限28時間、勤務間インターバル9時間の確保に加えて、宿日直が時間外になる場合や、外勤や一部の自己研鑽も労働時間に含まれることになります。オンコールについても、労働実態によっては勤務時間に含まれることになります。小児心臓血管外科医や小児循環器医の働き方からは、現状ではこの時間外の上限を守ることは難しいと考えています。しかも、大学病院においては、診療以外に、教育や研究の責務が生じている上に、民間との給与格差を埋めるためや地域医療を守るために外勤を余儀なくされており、今後の勤務体制の維持、特に急患や重症例に対する診療体制の維持が難しくなると考えています。 人員を増加することが一番簡単な対応策ですが、小児心臓血管外科医や小児循環器医は医師が足りない領域の一つであり、また、大学病院の経営上からも増員は容易ではありません。小児病院へ集約化して、効率を上げる方法も有効な手段と考えますが、学生や研修医の教育、及び、この領域への医師のリクルートを考えた場合、大学がこの領域から撤退することは将来的に得策とは思えません。Nurse practitionerの導入、事務補助の導入など、医師から他職種へのタスクシフトを進めることも、大学病院という特殊な診療機関に対して、人材確保の観点から国や学会からの援助を期待するものである。