[I-S02-3] Hemodynamic definitions at rest/on exercise and treat/repair at present
キーワード:肺高血圧, 小児, 定義
肺高血圧の定義は長らく、安静時のmPAP ≧25mmHgが用いられてきたが、2018年の第6回WSPHではmPAP ≧20mmHgへ変更するという提言がなされた。健常者のmPAP上限が20mmHgであること、mPAP 21-24mmHgの症例(主に成人の強皮症、慢性肺血栓塞栓症、COPDでの検討)は≦20mmHgの症例と比較して、低い運動耐容能や高い入院率・死亡率が根拠とされている。またPAHの定義には、mPAP ≧20mmHgかつPAWP ≦15mmHgとともに、肺血管抵抗(PVR) ≧3Wood Unitsが付加された。現時点ではmPAP 21-24mmHgの症例に対する既存薬の効果や安全性に関するデータが少なく改めて検証される必要がある。胎児期の生理的に高いPVRは出生後、急速に低下しmPAPは3か月までに成人と同等レベルに至るため、生後3か月以上の小児でも成人に倣いPHの定義が改変されることになった。PVRについては小児(特にCHD-PAH)では従来から適用されてきたPVRi ≧3Wood Units・m2が推奨されている。運動誘発性PH(運動時mPAP≧30mmHg)は病態生理に不確かな部分が多く、第4回WSPHでは取り消された経緯があるが、軽度の肺血管閉塞性病変を有する症例では症状が安静時に乏しく運動時のみ出現し、健常者に比べ運動に伴う心拍出量増加に対するmPAP上昇の程度が大きく、PHの早期診断の重要性から第6回WSPHで運動誘発性PHの概念が再検討された。しかし運動時のPAWP測定精度や左心疾患との鑑別など課題もあり、小児での検討は少ない。短絡性CHD-PAHでは肺血管閉塞性病変の重症度や可逆性、手術適応を評価する目的で従来から急性肺血管反応性試験(AVT)が検討されてきた。AVTに用いられる薬剤や反応性の定義には統一性に欠き、短絡閉鎖術後の長期予後との関連にも不明な点が多い。さらに年齢やCHDの種類、併存症や症候群合併など多因子の影響を受ける。PVR上昇したCHD-PAHに対する閉鎖術の適応については長期的視点に立って検討すべきである。