The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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シンポジウム

分子医学・再生医療・心臓血管発生

シンポジウム04(I-S04)
分子医学・再生医療・心臓血管発生「先天性心疾患の理解・治療・予防につなげる臨床心臓発生学」

Sun. Nov 22, 2020 8:00 AM - 10:00 AM Track7

座長:横山 詩子(東京医科大学 細胞生理学分野)
座長:古道 一樹(慶應義塾大学医学部 小児科)
座長:山岸 敬幸(慶應義塾大学医学部 小児科)※I-S04-1基調講演担当

[I-S04-2] 心臓神経堤細胞の世界

山岸 敬幸 (慶應義塾大学 医学部 小児科)

Keywords:発生, 流出路, 先天性心疾患

神経堤細胞(neural crest cell)は、今をときめくiPS細胞を遡ること約150年、1868年にWilhelm Hisによって発見された、胎生期の多分化能を有する細胞集団である。神経管の背側に起源し、間葉細胞として体の前後軸に対して分節的に遊走し、交感・副交感神経細胞、メラニン色素細胞など様々な細胞に分化する。 発見から100年余を経た1983年、Margaret Kirbyらによって神経堤細胞が心臓大血管の発生にも関与することが明らかにされ、耳胞から体節3までの神経管に起源する細胞群は心臓神経堤細胞と呼ばれるようになった。心臓神経堤細胞は、第III、IV、VI咽頭弓動脈に分布し、間葉系細胞として大動脈弓の形成に関与する。さらに、心臓流出路(円錐動脈幹)まで達して中隔を形成する。 今世紀初頭、心臓流出路・大動脈弓異常を高率に合併する22q11.2欠失症候群の主要な責任遺伝子としてTBX1が特定された。私たちは、胎生期のTbx1が心臓神経堤細胞には発現せず、当時心臓流出路を形成する新たな心臓前駆細胞として発見された二次心臓領域細胞に発現することを明らかにした。この結果は、心臓流出路・大動脈弓の形成には二次心臓領域細胞と心臓神経堤細胞の相互作用が必須であり、その異常の発生時期や程度により一連の心臓流出路・大動脈弓異常スペクトラムが発症するという新たな概念につながった。また最近、神経堤細胞は冠動脈の発生にも関与することが示されている。 心臓神経堤細胞は、外胚葉の神経管から生まれ、旅立ち、長い距離を移動して中胚葉系の組織・臓器である心臓大血管の発生に関与する、極めてユニークな多分化能細胞である。その起源、形質転換、移動、そして移動後の分化の分子機序が次々と明らかにされている。この独特な神経堤細胞の世界を堪能し、臨床心臓発生学の理解を深めていただければ幸いである。